表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
凄い加護を貰いましたが、私の夢はラーメンですよ女神様!  作者: 千両
四章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
89/97

89 ガストルの現状

「想像以上にひどい状態ね」


 私たちは先にガストル領に入っているドールの調査隊に合流した。

 隊の駐留している村は銀鉱山から流れる川の下流にあったため被害が特にひどいようだった。

 案内されたのは村の教会で、床に寝かされている人々は外傷はないものの、体に痛みがあるようで、そこかしこから呻き声が引っ切り無しに聞こえている。

 場所まで案内してくれた村長らしき人物も五十才前くらいの男性だが、腕は枯れ枝の様に細くなっている。

 農作物がやられ、川の水が危ないとわかっていても、その水を飲まなければならない村の現状が、そこには浮かび上がっていた。


「アイラ、すぐに解毒と食事の準備を始めるわよ」

「ぐふふ。我は元凶である川の上流にフェロンを移植しに行ってくるわ」

「うん。ルキラ、くれぐれも気をつけてね」

「大丈夫です。ルキラ様は何があっても我々が全力でお守りします」


 ドールから来た調査隊の騎士たちを連れて、ルキラが川の上流に向かった。

 私たちは、アハトで大漁だった魚たちとフェロンの身に、味噌を薄めに溶かして鍋を作っていく。

 具材はあくまでも食べられる体力のある人のための物で、寝込んでいる人々にはスープのみだ。

 ずっと飢餓状態だった村人の為に、鍋には少量のポーションも混ぜてあるので体の負担は少ないはずだ。


「ありがとう。ありがとう。あんたらは村に女神様が使わしてくれた聖女様だ。もうこのまま死んでも悔いはない」

「こらこら、助けに来たのに死んではダメだよ」


 汁を口にした寝込んでいる村人たちは、味噌の優しい味とスープの暖かさから、目に涙を浮かべて口々にお礼を言っていた。

 時折、ジョーダンで笑いまで漏れるようになって、緊迫していた空気が解けていくのを感じる。

 この味噌のスープが絶望しきっていた村に希望をもたらしているのが肌で感じられるようだった。


「この村は、後は私達で何とかなります。他の村もどうか救いに行ってください」


 フェロンの定着や効果も確認してからにしたかったが、村の様子を見るに別の村も切迫していることは明らかだった。

 村長は私たちの運び込んだ物資と調理法を聞くと、あとは自分たちでやると私たちを送り出してくれた。


「我々は次の村に移動しながら、特に危険な村の選別をしていきますので、地図にある銀鉱山から流れる、主要な川にフェロンを根付かせろ事を先にお願いします」

「わっ、プリン達が屋台で鍋を作ってるから、ノチア行ってきて」

「プリン、わかったわ」


 他の村への支援をプリン達に任せて、フェロンを抱えてゴウオウと飛ぶ。

 来るときもそうだったが、鉱山に向けて飛べば上空からガストル領の現状が目に入る。


「ここまで植物が枯れてしまっているなんて」

「復旧には時間がかかるだろうけど、まずは目の前のことを精一杯やろう」

「ぐふふ。難民の受け入れも考えなければね」

「まったく、ここまでの事態になるまで放置するなんて、何を考えていたんだ」


 眼下には広範囲で枯れてしまった植物が続いている。

 鉱害の騒動が収まっても、元に戻るには何年もかかるに違いない。


「フェロンが救いになってくれればいいわね」


 フェロンが食べられるという事がかなり大きい。

 魔法生物であるがゆえに、増やすことは容易なのだ。

 これからもしばらく食糧の危機が続くガストルに取って、本当にフェロンの存在は大きい。


「ノチア、地図ではあのあたりにまず繁殖させましょう」


 ルキラの指示で降り立つ。

 フェロンを定着させるのは簡単だ。

 定着させたい川の中の側面を軽く削ってそこに付けるだけでいい。

 ただ、フェロンは魔法生物の中でも特殊で、増やすためには特殊な液体を注入する必要がある。

 逆に言うならば、その液体さえあれば簡単に短期間で増えるのだ。

 その液体はフェロンの母体になっているフェロンからしか抽出されないので、実質フェロンを増やすことが出来るのはフランのみと言う事になる。


(簡単に増やせるのに、増やせる人間を限定できる。本当に人工物みたいね)

「さあ、次に行こう」


 設置は一瞬で済むので、作業は早かった。

 ゴウオウの移動力も加わって、たった一日でもおお元の川には大体フェロンを設置できるようになった。


「プリン達の元に戻りましょう」


 私たちが帰るとプリンが迎えてくれた。

 手には味噌のスープを持っていて、周りには小さな子供たちもいた。

 スープを受け取って飲むと、優しい味と塩味に息が漏れる。

 そして、プリンと周りの子供たちを見た。

 全員が痩せてはしまっているが、体調を崩したりする前に来れたよう嬉しい気持ちになった。


「暖かい。これで明日も頑張れそうね」

「わっ、プリンも頑張る!」


 まだガストルへの支援は始まったばかりだ、小さな子たちが笑えるように、明日も支援を頑張らないと。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ