88 フェロンを調べて
ダイアについてアイラの研究所に向かうと珍しい人物がいた。
「ツテゾじゃないか。珍しいね、わざわざラウメから来たのかい?」
「アイラ様、ポーションの件で気になる事があったのです」
「そうなのか? だが済まない。緊急で調べたいことがあるんだ。わざわざダイアまで来てもらって悪いんだが、それが終わるまでは話を聞く暇が無いと思う」
「緊急ですか? 私も加わっても大丈夫でしょうか?」
「ああ、ツテゾの意見も役に立つはずだ。その申し出はうれしいよ」
研究所の中でツテゾにざっと説明する。
さすがにガストルで鉱害が出ている事は言えない。
そもそも、鉱害と言うのも現段階ではヒューリの予想でしかないのだ。
「フェロンの浄化の効果ですか。それならばちょうど私が来た理由と一致しますね」
「まさか立証できたのかい?」
「いえ、水の浄化の話しは初耳です。しかし、フェロンで作った味噌に解毒の効果があるのがわかったのです。私がダイアに来たのがその理由です」
「信憑性が出てきたね」
「アイラ、フェロンの浄化力の検証は私とルキラに任せて、味噌の解毒の効果の解析をお願いできないかしら?」
「そうか。すでに鉱害によって苦しんでいる人の助けになるかもしれないね。でも、検証を君たちに任せてしまって大丈夫かい?」
「ぐふふ。この程度、我が魔眼の力をもってすれば、一瞬で丸裸よ」
「スタッフも優秀だし、私たちを信じてアイラ」
「わかった! すぐに終わらせてみせるよ」
フェロンの浄化能力を調べていると嬉しい結果がわかった。
それはフェロンが浄化能力があるということ以外で、浄化に使った後でも中の身の部分を食べられると言う事だ。
浄化の機能は外側の殻の部分で行われるようで、汚染された水を吸っても中の身に影響がなかったのだ。
「そこは前世の牡蠣とは違ってくれて助かったわ」
鉱害ならば作物にも被害が出ている可能性がある。
水を浄化した後でも飢饉が襲う可能性はあるのだ。
私たちがフェロンの浄化能力の検証を終えたタイミングでアイラも戻ってきた。
「凄いよ。フェロンの中心部の種、コウジの部分には鉱物系の毒素に対して強い解毒の作用がある事が判明したよ。しかも、体内に溜まってしまった毒素を排出する効果もあるんだ。まさにフェロンは鉱害の特効薬だよ」
アイラの説明を聞いて出来過ぎだと思ったが、もしかしたら古代の人間が、元々鉱害対策としてフェロンを作っていた可能性に気が付いた。
フラウ領にあった書物の知識は、今のこの世界よりも進んでいた気がしたので、あながち間違った考えでは無いだろう。
「私達もわかったことがあるは、フェロンは浄化に使っても身の部分を食べられるってことよ」
「じゃあ、まずはガストルの調査結果を待たないとね。ドールに戻るかい?」
「いえ、待っている間に味噌を集めてしまいましょう。それに飢饉が起きているのなら食糧の炊き出しも必要よね。そうだ。屋台を完成させてしまいましょう」
「ぐふふ。なるほどすべてが繋がる。まるで神の采配ね」
「わっ、ノチア! プリンが……クラウネが協力する。屋台いっぱい作って」
「えっ、クラウネ達で屋台の動かそうって言うの? 出来る? それに……いいの?」
それまで黙っていたプリンが主張してきた内容に私は驚く。
なぜなら、過去にクラウネを奴隷の様に酷使していたのは、旧メルカマル領。
つまりは現ガストル領なのだ。
当時の事を悪く思っていないプリンだが、素直に頷けない私がいた。
「わっ! プリンは助けたい。ノチアも、他の人も」
初めの頃よりもプリンの意思はハッキリしてきている。
自分の意思でやるというのなら、私に出来る事は背中を押してあげる事だ。
私はプリンを撫でて、意見を尊重することにした。
「わかったわ。屋台はクラウネでも使いやすいように作ってもらうわ」
その後は調査結果が出るまで、アイラはポーションとしての効能の研究を続け。
ルキラはガストルの入るための手続きを迅速に行うために根回しを。
そして、私とプリンは屋台作りに協力した。
四人の職人たちもすっかり打ち解けていて、少しでもいい屋台を作ろうと余念がなかった。
そして、遂にガストル領の調査で鉱害が認定された。
ガストル領の領主ボーズマン伯爵は責任を取らされて爵位をはく奪された。
そのことで一時的に今回の事件の采配をドールが獲得することになった。
「よし! みんな、ガストルの民を救いに行くわよ」
私たちは屋台とフェロンを携えてガストルに乗り込んだ。




