86 騒動は海の上で鳴って
ビギン商会の商船に着くと、すでに接敵しているようで水飛沫が激しく達のどっていた。
船には巨大な足が絡みついていて、シードラゴンを守るために乗員が水面に向って魔法や銛を撃っているのが見える。
「ゴウオウ、アイツの足を斬るわ。船員の魔法に気を付けながら、掠めるように飛んでくれる。プリンは絶対に私を離しちゃダメよ!」
「わっ! わかった!」
指示が出るとともにゴウオウが加速する。
契約の繋がりがある私とゴウオウの息はぴったりで、見事に一撃でティングスラーの足を切断できた。
「ノチア様ですか! 救援感謝します! 今だ、畳みかけるぞ!」
足を斬られたことでティングスラーが水面より顔を出した。
その隙を見逃さず、セリティの指示のもと一斉に魔法が撃ち込まれ、銛が撃ち込まれる。
特に魔導具で打ち出される銛が強力で、あっという間にティングスラーが弱っていく。
「これなら大丈夫ね」
「ノチア! ノチア! 音がする!」
やっとの事でティングスラーを撃退したと思ったら、遠くで飛沫が上がる。
「新手のティングスラーです」
「二匹目だと! ありえない」
二匹目の出現で船上に緊張が走ってのがわかる。
先ほどの襲撃でシードラゴンはすでに傷つている。
このままではシードラゴンの命に係わる。
「ノチア! 音がするの!」
「ええ、またティングスラーがこっちに来ているのよ」
「違うのノチア! 変な音、船からなってる!」
「それはって……」
「音うるさい! みんな腹を立ててる」
「その襲撃の原因が船にあるのね!」
プリンの指摘を受けた私はすぐに船に降り立つ。
「船の上は危険です。すぐにお戻りください」
「セリティ、船に何かが仕掛けられているみたいなの!」
「船に? どういうことですか?」
「プリンが船から音がしてるって。それに魔物が反応しているって言ってるわ」
「音? まさかモティフの鐘ですか! わかりました、案内してください」
プリンの誘導で船の中に入る。
すると、一人の船員の部屋へと着いた。
部屋に入ると、船員が残っていた。
「フル、なぜ部屋に残っているのですか?」
「これはセリティ様。少し忘れ物をしましてね」
「その忘れ物とはモティフの鐘とのことか?」
そうセリティが言った瞬間、フルと呼ばれた船員が私の方に向って走ってくる。
「人質にでもしようとしたんだろうけど、私そんなに弱くないのよね」
鞘に納めたままの剣でフルを打ち付ける。
セリティが素早く倒れたフルの懐から魔導具を出して光を消した。
「わっ、音が止まった!」
「魔導具を止めました。急いで甲板に戻りましょう」
甲板に出ると、船員の歓声が聞こえた。
どうやら、魔導具を止めた事で、正気に戻ったのかティングスラーが海に戻っていったようだ。
「もう大丈夫そうね。私は戻るわ。プリン行きましょう」
「ノチア様、ありがとうございました。このお礼は必ずいたします」
「わっ、またねー」
アイラ達と合流した後に、魔導具の話しをするとルキラが考える仕草をする。
「ぐふふ。モティフの鐘はそこまで範囲は広くないわ。事前に小さな魔物が大量発生していなければおきなかったわね」
「それもモティフの鐘の効果じゃないの?」
「もともと魔物除けに作られた魔導具なんだよ。小さな魔物はむしろ近づいてこないんだ」
「ぐふふ。こちらも陰で暗躍している者がいそうね」
その後、ルキラの指示した隊によって調査が行われ、犯人らしき人物が捕らえられた。
なんとその人物は私がドールの舞踏会の時に恥をかかせた、デモイ男爵の長男ハーメルだった。
この事件にガストルがかかわっているかどうか調査は継続されている。
「ぐふ。場合によっては国際問題。この事件でガストルがかかわっていたら、もう容赦しない」
「さすがに今回の事はやり過ぎだね」
「セリティにも事情を聴かなければいけないかしら」
今回、セリティの船の乗組員も事件にかかわっている。
想像以上の事件の大きさをごまかすように、今回の立役者のプリンを思いっきり私は撫でまわした。




