85 大漁と危機
ビギン商会の信頼を得たことで、その後の取引の手続きは順調に進んだ。
馬車や店舗の確保や、ビギン商会へのスタッフ斡旋のほか、緊急時の保証など
細貝所まで決められていった。
そんな中、事件が起こった。
「えっ、海の魔物が大発生してる?」
「そうなのです。アハトの湾内の魔物の数が急増しているのです」
シードラゴンを使って魔物除けをしているとはいえ、海の魔物は数が増えと攻撃性が増すと言う。
このまま放置すれば、アハトの貿易に重大なダメージを受ける事になる。
「ぐふふ。矮小なる者も集まり過ぎれば、新たなる災いを呼び込む原因になるわ」
「小さな魔物を狙って大きな魔物まで湾内に来てしまうってことだね」
「そうなったら、漁業にまで影響が出てしまうわね」
原因がわかっていない以上、まずは集まっている魔物を減らすしかない。
漁として、喜ばしい範囲の内に減らさなければならないだろう。
「とりあえずの問題としては魚が取れすぎることで、価格が安くなりすぎる事かな。協力してもらうのに、彼らの収入が減ってしまっては申し訳ない」
「ぐふふ。消費が間に合わなくなって捨てる事になるのは避けたいわね」
「それなら、私がゴウオウで魚をラウメやダイアに卸すわ。アイラにはシュリン様へ手紙をお願い。ルキラは魚を運ぶための袋か、箱をお願い」
「任せてくれ」
「すぐに用意するわ」
私はゴウオウにお願いする。
ゴウオウはあっさりと協力してくれた。
すぐに袋が用意されると、漁師たちの組合に連絡を取る。
「ごめんなさい。料金の全てを先払いはできないわ。半分なら先払いできるけど」
「いや、後払いで十分だ! めったにない大漁だ。他の領に出した分は後からでも十分だ。ボーナスだと思って後からもらおう」
「助かるよ」
漁師たちが後払いに納得してくれて、私とアイラがほっと胸を撫で下ろす。
「まずはどこに売りに行くんだい?」
「フラウ領ね。あそこなら急に持って行ってもすぐに販売まで進められるわ。その間にアイラの手紙をシュリン様に渡して、私もラウメで魚の販売の準備と宣伝を進めてもらうわ」
そうしている間に、一回目の漁が帰ってきた。
漁師の顔はみんな満足げだ。
それだけで大漁な事がわかる。
「おう! まだまだ終わりじゃねぇぞ! 次行け」
「「「おう!」」」
用意された袋に入ってた大量の魚をゴウオウに持ってもらう。
「アイラとルキラはここで対処をお願い」
「ああ、こっちは任せてくれ」
「ぐふふ。ノチアも気を付けてね」
まずはゴウオウにダイアに向ってもらい手紙を渡す。
そのままフラウ領に行って、魚の販売をお願いしラウメへと飛ぶ。
ラウメに着いたのは深夜になっていたが、急に帰ってきた私を父様も母様も快く迎えていれてくれて、対処に動いてくれた。
「ノチア、無理はダメよ。はい、お弁当を作っておいたわ」
「ありがとう母様。大丈夫、無理はしないわ」
「「姉さま気を付けて」」
「行ってくるわね。ルーナ、ソラーレ」
館で睡眠をとった後、すぐさまアハトに帰る。
ついてみると町では活気に満ちている。
しかし、たった一日だが魚の価格がすでに下がり出していた。
相変わらず漁にひっきりなしに出ては大量の魚を取って戻ってきていた。
「次はダイアに持って行って、帰って来てからすぐラウメに持っていくわ」
「ぐふふ、ノチア疲れは大丈夫? ゴウオウに乗りっぱなしでも疲れはたまるのよ」
「まだ一日目じゃない。ゴウオウも私も問題ないわ」
そう言ってゴウオウを撫でる。
ゴウオウに乗っていると、契約のおかげかそこまで体に負担は無い。
ある程度話していると、私が持っていく袋が満杯になる。
「それじゃあ、行くね」
その後も、ダイア、ラウメ、フラウをローテーションして運んだ。
しかし、三日目でようやく落ち着き始めた頃に恐れていた事態が起きた。
「大変だぁー! 大型の魔物が湾内に入ってきた」
「種類は! どんな魔物なんですか!」
「足が有った。あれはティングスラーだ」
「寄りにもよってティングスラーですって! シードラゴンの天敵じゃないの」
ティングスラーはイカの魔物だ。
狂暴で、奴に沈められた船も多く、船乗りたちの恐怖の対象になっている魔物だ。
「! 私がゴウオウで様子を見に行くわ!」
「危険だノチア!」
「でも、このままじゃビギン商会の船に被害が出るわ!」
「わっ、プリンも行くの!」
ゴウオウに乗って向かおうとした所に、強引にプリンが乗ってきた。
「プリンはダメよ」
「わっ! ノチアがいいならプリンもいい!」
「――ッ、もう! 絶対に話しちゃだめだからね!」
プリンの中に強い意志のようなものを感じて、振り払う事が出来なかった。




