83 船での会食
ビギン商会の船に乗るために、桟橋の端にくっ付いている船に乗って待機する。
停泊している船からの積み荷の積み下ろしに特化した、この先端の船は、二隻の船が横に連結されている形で、船の先端が階段状のスロープになっており、停泊中の船に垂直に接続する事でそのまま船の乗り降りが出来る。
動力は魔導を使っているようで、船の後方に接続された桟橋の部分がマジックハンドの様に伸びて船を前に進める仕組みになっている。
「ようこそお越しくださいました。さあ、中にお入りください」
接続して船に乗り込むとセリティが待っていて案内される。
そのままグレート・キャビンに通されると、沢山の料理が並べられているテーブルが三つ用意されていた。
船の中なのに宮殿を思わせる内装は蝋燭ではなく、魔導具の光で照らされている。
鏡や棚に装飾された金属が魔導具の光を反射して、煌びやかな雰囲気を出す。
テーブルも椅子も職人が丁寧に仕上げたように木目が美しく、磨き上げられたシックな光沢が重厚感を出している。
立食形式になっている料理は種類も多く、ソーセージに数種類の動物の串焼き、魚のグリル、煮込みにパイやタルト、チーズやナッツなどの他にデザートも充実している。
ドラゴンに引いてもらう事で航行の速度を上げているとはいえ、寄港したばかりでここまでの食事を出すとは思わなかった。
肉も塩漬けされたものではなく新鮮な事から、家畜をそのまま船に乗せているのだろう。
私たちが飲めないことを考えて、出された飲み物はワインではなく、果物を絞ったもので、こちらも鮮度が良くとても冷えていた。
「これは見せつけられたね。凄い魔導技術が使われていそうだ」
「ぐふふ。内装もお金をかけているわね。それでいて品が良く無理をしているようにも見えないわ」
「ただ、料理はどちらかと言うと、こちらの食事に合わせている気がするわね。どうせなら私はランザント王国の料理が食べたかったわ」
そんな私の心を見抜いてか、メインの後に持って来られたのは予想外のメニューだった。
「これって冷やし中華?」
麺は品目の中に有ったパスタだろうか?
具が多く乗っているが、スープが無くタレがかかっている。
匂い的にはゴマと胡椒で、醬油や出汁が使われているわけでは無い気がする。
「野菜炒めの中にスパゲッティーが入っている感じね。……うーん、なんだろう。美味しいのになんか凄く惜しいって感じ……」
フォークが置かれているが、焼きそばに近いので、凄くお箸が使いたかった。
そう思っていると、セリティ達、ランザント側の商人が音を立てて麺を啜り始めた。
その手にはお箸が握られている。
それを見た私はほぅっと息を吐いて、すぐに給仕にお箸を頼んで同じように食べる。
すると、それを見たランザントの商人たちが目を丸くして私を見ていた。
「驚きましたね。音を立ててパスタを食べるのは我が国の流儀ですが、同じようにされた方は初めてです。しかも、箸の使い方が実に美しい。さすがは三賢嬢と言ったところですか」
そう言われてアイラとルキラを見ると、私に合わせて同じように食べていた。
この行為がかなり好感を持ってもらえたようで、セリティの顔から力みのようなものが抜けたような気がした。




