82 ランザント王国の商人
到着と同時にランザント王国の商人との面通しの場が設けられた。
その場はオンリー商会が用意している屋敷の一室だ。
設けられた部屋の両脇には待機部屋があり、両方の陣営が揃った時点で私たちが少しだけ遅れて部屋に入る。
ただの商人より前に入ることは出来ないが、軽んじていないと思わせる絶妙のタイミングの入室だ。
ドールの館に呼び出すではなく、相手の商会に伺うでもない第三者の商会内で顔合わせをしているあたり、身分や権力のバランスに神経質になっていることが受け取れる。
「お初にお目にかかります。ランザント王国ビギン商会の筆頭を務めますセリティと申します」
「こちらはドール領令嬢のルキラ様、ダイア領令嬢アイラ様、ラウメ領令嬢のノチア様です。それと……」
「わっ、プリンはプリン!」
アルティに紹介されて私達も礼をする。
セリティもプリンのことは気になったようだが、それ以上に目を輝かせて私たちを見た。
「おお、西の三賢嬢にお会いできるとは光栄です」
「ぐふふ。三賢嬢? とは初耳ね」
初めて聞く言葉に私たちが困惑しているとさらにセリティが続ける。
「何をおっしゃいます。新たなポーションを広め、竜との交渉を成功させ、街道を整備し、魔領との国境を開いた三人の令嬢の話しを、知らない商人はいません。味方には莫大な利益をもたらすが、敵対すれば容赦のない制裁が加えらる。苛烈でありながら、その姿は華のようだという噂は広く知られています」
「苛烈か……あながつ嘘とも言えないな」
アイラが私を見る。
心当たりはあるけど、それは私の主導では断じてないと言いたい。
しかし、私たちの知らないうちに、凄い噂が広まってしまっているようだ。
領主の娘とは言え、こんな小娘達に交渉の代表を任せた理由がわかった気がする。
「こちらが貿易の品目になります」
渡された紙に書かれていた数に驚く。
毛織物や布製品、宝石に鉱石。
書物や美術品と言った文化的なものも充実している。
食品は砂糖と名産の酒、小麦と観物としてパスタもある。
さらには、私的には歓迎できないがタバコなんかもあった。
「膨大な量ですね……」
「我が商会でも荷馬車は用意していますが、新たな街道の解放で市場は活性化しています。この度のドール領主様のご協力の提案は我々としても大歓迎なのです」
これまでの量の三倍以上を扱うことになる。
凄まじい金額が動くのは間違いない。
失敗できないプレッシャーと期待が渡された紙から伝わってきているようで、ルキラの肩が震えているのがわかる。
「大丈夫よ。私とアイラとルキラなら楽勝よ。それに結局は商売の事は商人に任せるしかないわ」
励ましてみたが、私たちがそこまで主導で動くことは無い。
後方で腕でも組んでいればいいのだ。
顔合わせが想像以上にうまくいったのか、私たちはセリティの船に呼ばれ振る舞いを受ける事になった。
「さすがに令嬢のみで他国の船に行かせるわけにはいきません」
護衛はドラゴン騎士団からデュークを含めた五人が私たちに着くことになった。
招待を受けるうえで私たちはドレスでの参加になったが、アイラだけは少し嫌がっていた。
実は私も少し不安だったので、デッカに仕込みの警棒を作ってもらってスカートの中に隠している。
ボタンを押すと長く伸びる、あの三段警棒だ。
「令嬢でも自分の身は自分で守らなきゃね」
「ノチア、なんだかワクワクしてないかい? 何もないのが一番なんだからね」
「ぐふふ。新たな武器に心躍らせるのは仕方がないわよアイラ」
ゴウオウにもいざと言う時には駆けつけてもらえることになっている。
でも、実際にワクワクしているのは異国の食材を田出られるからだ。
「ラーメンのバリエーションはいくらあってもいいのよ!」
どんな船ではメニューが出されるのだろう。
今から楽しみだ。




