8 毛玉現る
「シンバさん、あのキノコファイターをすぐに倒しに行きましょう!」
「危険です。いくらノチア嬢の頼みでも、それはできません」
私はシンバさんと揉めていた。
収穫祭のあの後、カレーうどんを完食した私は、メイのお肉も食べに行った。
私の我儘でチャーシューに挑戦してもらったメイの肉は、醤油のない状態でも私の意見を取り入れて、かなり見た目がチャーシューだった。
しかし、メイ自体が薬草を主食にしている魔物らしく、肉の味は漢方のような薬膳の味だった。
それはそれで良かったのだが、ついでにと茹でたキリングファイターキノコの笠に私は衝撃を受ける。
紛うことなき豚骨の出汁の香りと味だったのだ。
私は逃がした(見送った)キノコはあまりの大きさに悲鳴を上げて気絶してしまった。
「そもそも、キリングファイターキノコはレアな魔物なのです。そうそう簡単には見つけられない。また奥方に心配をかけるのですか?」
「うううっ。せめて、せめてあの遭遇した所までで良いから、お願い」
どうしても諦めきれなかった私は、なんとか妥協点を探して交渉を続けた。
そして、三竦みの現場までは行ってもいいと許可を貰った。
「崖の崩れている場所にはあまり近づかないでくださいね。危険です」
「はーい」
私は慎重に足元を確認しながらも、キリングファイターキノコを探す。
しかし、そんなに都合よく行くはずもなく、夕暮れが近づいてきてしまった。
そんな中、私は茂みが不自然に揺れている所を発見する。
「シンバさん。なにかいる」
「今行きますから気をつけてください。絶対に一人では近づかないで」
シンバさんに先頭になってもらい慎重にその茂みに行く。
慎重に茂みをかき分けると、そこにはフワフワの毛玉が転がっていた。
「動く毛玉だわ」
「どうやらグレート・メイの子供のようですね。きっとあの時の個体が親だったのでしょう」
短い手足てポテポテと動く姿は可愛い。
いまの姿が成長すればあの巨体になるとは考えられない程だ。
「これはいいですね。グレート・メイは幼体なら人が飼いならすことが出来ますよ」
「この子を飼うの? 食べるために?」
抱き上げて見つめると、フワフワの毛の中からクリっとした目がこちらを覗いていた。
「かわいい。これを食べるために育てるはちょっと心が苦しくなるわね」
「とんでもない! グレート・メイは使役出来れば、凄く有益な魔物なのです。領地間の荷馬車を引かせたり、畑の耕しに使ったり、使い方はいくらでもあります。寿命も長いですから、食べるとしてもまだまだ先です」
そんな事をシンバさんと話していると、毛玉メイが腕から飛び出し走り出した。
後を追いかけると、崖崩れで出来た洞窟のような場所に入っていってしまう。
「食べると聞いて逃げたのかしら」
「メイは頭が良いのですが、さすがに幼いのでその心配はないでしょう」
追いかけて洞窟を進むと明るい場所に出る。
そこに毛玉メイはいた。
天井の崩れた部分から差し込んだ光で照らされ浮かび上がるのは、ひんやりとした白と水色に溢れてた空間だった。
水色の血晶のようなものと白い結晶化した粉が壁一面に着いていて、床には地下水が少し湧き出して流れを作っている。
「⋯⋯これはもしや!」
シンバさんが湧き水の近くでしゃがみ込むと水を口に含む。
毛玉メイは私が着いたのを確認すると手の中に飛び込んで収まる。
「ノチア嬢、これは素晴らしいです。これは岩塩の層です。ラウメ領に岩塩がでたのですよ」
「すごいわ。あなた、案内してくれたのね」
私は嬉しさのあまり、毛玉メイを掲げてその場で回る。
私の喜びようを見て毛玉メイがドヤ顔したように思えてさらに笑ってしまう。
領地が発展するのが嬉しい。
何より塩が取れるようになったが素晴らしい。
これなら、麺の完成で塩ラーメンが気軽に食べられる日がくる。
私とシンバさんは報告のために急いで町に戻った。
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