79 屋台のメニューは
「だ~か~ら~、魔道具を小さくしろって言ってんだ。スペースは限られてんだろ? もしかして、小さくする技術がないのか?」
「言うねぇ~。じゃあ、君の方こそもっと薄くて軽い寸胴を作って見なよ。軽量化の問題なんだろ?」
「おう。やったろうじゃねぇ~か! お前もだからな」
「望むところだよ!」
インタを連れて帰るとリンクとゾンマか言い争っていた。
ヒートアップはしているが険悪さは感じない。
お互いの悪い点を言い合う事で、刺激し合っているようにも見える。
「わっ、ケンカ? ケンカは良くないってノチアが言ってた!」
「確かに非効率ですね。でも、駄目とも無駄とも思いません。必要な事です。まぁ、声量は落としてもらいたいですが……」
プリンが止めようとしたが、それをヘンプが止めた。
プリンは良くわからないと首をひねっていた。
「ああ、インタ、帰ってきたのですね。あなたに相談したいことがあったのです」
「おっ、俺に? なっ、なんでしょうか? あっ、それと……みなさん……最近来ることが出来なくて……すみませんでした!」
「「「気にするな!」」」
他のメンバーは戻ってきたインタを責める事なく、何事もなかったように受け入れようとしたが、インタは自ら進んでここに来なかったことを謝った。
インタの性格的には、かなりの勇気が必要だっただろう。
彼なりにケジメを付けたようだ。
「そうだ。屋台で出すラーメンはどの種類にするんだい?」
「うーん。なんとなくだけど味噌ラーメンって考えてたんだ。そろそろ味噌が出来るでしょう?」
「ぐふふ。ではノチアの腕を存分に振舞ってもらいましょう」
味噌を熟成させているのはフラウ領の人達に任せている。
熟成の期間が終わっても、味見してみるまでは成功しているか分からない。
ドキドキだ。
「そうね。プリンについても少し聞きたいし、フラウに行きましょう」
私が離れている間にも屋台の作成に支障がないように出来るだけ話し合って、私たちはフラウ領に飛んだ。
「おお、ノチア久しぶりなのじゃ。薄情じゃな。もっと来るのじゃ!」
「ノチアは忙しいじゃん! 狐の相手なんてしてられないじゃん?」
「竜め! 貴様に名を言ってないのじゃ!」
「ごめんねフラウ。それより味噌の出来はどう? 味見してみた?」
「ノチアを差し置いて味見などしないのじゃ。完成しているのでわらわに振舞う事を許すのじゃ」
「こいつに作る必要ないじゃんよ」
「何を! お前こそ帰るのじゃ!」
「ちょっと! フラウもゴウオウも仲良くしてよ」
「わっ、フラウ味噌どこ?」
マイペースなプリンによって話は終わり、味噌の保管庫に向かう。
私がラウメに帰った後も味噌作りには挑戦していたようで、私の仕込んだ壺以外にも十個以上保管されている。
「よし、じゃあさっそく味噌ラーメンを作りましょう」
ラーメンの道具一式は持って来ていなくても、もうフラウ領ではラーメンを作ることが出来る。
なんといっても街道が完成して、人の流れが出来ているのだ。
シリオスが手を回して、フラウ領に入れる人間は厳選しているとはいえ、出来る前とは比べ物にならないほどの人と物資が行きかっている。
「そういえば、フラウ領内の人材育成はどうなっているの?」
「うむ。その点については皆に感謝なのじゃ。そなたらの連れてきた人材が優秀でな。かなり育っておる。もうわらわの代わりにこの領の運営を任せられるほどなのじゃ」
「わっ、プリンも優秀」
「しかし、別で困っていることがあってな」
「困っている事?」
味噌ラーメンに乗せるための野菜炒めを作りながらフラウの話を聞く。
アイラもルキラも調理しながら耳を傾けている。
「この味噌の元になる麹。フェロンのことじゃ」
「わっ、フェロン。久しぶりに食べたい。ノチア食べに行っていい?」
「大丈夫よ。久しぶりに他のクライネにも会ってきたら?」
「? じゃあ、行ってくる~」
「って、フェロンの事って?」
「うむ。フェロンの養殖を始めているんじゃが、それが苦戦しておるのじゃ」
「あの山以外では育たないの?」
「そうじゃな、いろいろ試したが大きくならん」
「ちょっと待って、麺が茹で上がっちゃったわ!」
話しの途中だが味噌ラーメンが完成してしまった。
フェロンが育たないのも気になるが、まずは味噌ラーメンを全力で味わわなければ味噌ラーメンに失礼だ。
「「「いただきます」」」
まずはスープだ。
すでにレンゲも作って広めているのでスープはレンゲで掬う。
(やっぱりレンゲよね。道具が揃うとテンション上がるわ。味噌の良い匂い。匂いは合格ね! って、あれ?)
スープを飲もうとして気が付いたが、良く考えたら私は味噌の味見をしていない。
私の為にアイラとルキラが味噌の出来の確認してくれたからだが、よく考えたら前世の味噌の味を知っているのは私だけだった。
(まあ、もう作っちゃったし味見の段階でアイラもルキラも不味いとは言ってなかったもの大丈夫よね)
私ははやる気持ちを押さえながらスープを口に運ぶ。
(ああ、ちゃんと味噌になっている)
味噌と出汁の香り、味噌独特の塩気とコク、そしてその中に溶け込んだ旨味がしっかり生きている。
見た目、香り、味、すべてが味噌ラーメンを型作っていた。
(わぁー。美味しいし懐かしいな)
忘れかけていた味噌の香りが鼻を抜けて、少しツンと痛んだ。
確かに味噌ラーメンだ。
「味噌、上出来じゃない? やっぱり屋台のメニューは味噌ラーメンね」
「ノチア? フェロンの話は忘れてないじゃろうな?」
「大丈夫よ。味噌ラーメンを普及させるにはフェロンは不可欠だもの」
フェロンが育たない理由。
まずは、大きくならなかったフェロンを確認してみましょうか。




