75 誕生日
いよいよルーナとソラーレの誕生日だ。
プレゼントもすでに用意してある私は、調理場で今日の料理の手伝いをしている。
誕生日にラーメンを食べるのは私の誕生日にやるので、ルーナとソラーレの料理は普通だ.
しかし、誕生日と言う事もあって、その料理は凄く豪華だ。
鹿の魔物のソテーには、珍しく手に入ったトマト(名前はトゥーメル)で作ったソースがかかっている。
新鮮な野菜のサラダはダウサの食物油とミーザの果汁で味付けし、豆とキノコのスープは具だくさんだ。
出来上がりも近付き、良い匂いが部屋に漂い初めている。
「ケーキがあったら完璧なんだけど……」
特製のシャップのパイを見ながら、シリオスの作ったケーキを思い出して呟く。
シャップ(カボチャ味)のパイも十分美味しいが、砂糖と生クリームを贅沢に使ったケーキには及ばない。
「二人にも食べさせてあげたいけど、さすがにラウメであれを再現するのは贅沢が過ぎるわよね……」
「お嬢様! 吹きこぼれています」
「あああっ! ごめんなさい」
料理も完成して夕食の時間に近づいたので、テーブルの上に料理を並べていると、母様がルーナとソラーレを連れて入ってきた。
プリンも私の手伝いを終えて席に着く。
ミアとケイシーは父様が来るまでは席に座らずに立って待っている。
最後に父様が来て、みんなが席に着くと誕生日を祝う晩餐の始まりだ。
「ルーナとソラーレの五歳の誕生日を祝して乾杯」
「「「乾杯!」」」
父様と母様や大人組はワインで乾杯する。
ミアやケイシーも今日ばかりは一緒に乾杯して飲んでいた。
私たち子供はルボンという、春に獲れる果実のジュースだ。
ルボンはサクランボのような味だが、色が黄色で少し酸っぱい。
「あれ? ルーナもソラーレもあんまり食べてないじゃない。もしかして、あんまり美味しくなかった?」
「ううん。とっても美味しいわ」
「うんうん。美味しい」
せっかくの誕生日なのに、二人共元気がない気がする。
私は料理を失敗してしまったと思って慌てるが、そうではないようだ。
「わっ、ジュースもっと飲みたい。おかわりよ! おかわりを入れて!」
「プリン。ジュースばかりじゃなくて、他も食べなきゃダメでしょ」
「わっ、食べるから、早くおかわり! 美味しいわコレ!」
プリンの騒がしさにルーナとソラーレも笑っていたので、少し安心する。
食事がひと段落したところで、プレゼントを渡す。
父様のプレゼントの勉強机は、今日すでに届いて使い始めているので当たり前だがここには無い。
まずは母様が、編んだ服と取り出してルーナとソラーレ、そしてプリンにも渡した。
編んだ服は、これからの時期でも着られる透かし編みのカーディガンだ。
サイズはぴったりで着た白いカーディガンを着てクルっと回ると凄く可愛い。
「「母様ありがとう」」
「わっ、ありがとう」
「じゃあ、次は私からね。まずはルーナには文字を学ぶための本よ。アイラにお願いしたら、ルーナの為に本を今度持って来てくれるって言っていたから、それまでのお勉強用よ」
「アイラお姉さまが! 嬉しい、私がんばるわ」
「それから、ソラーレにはマントね。サイズはぴったりだと思うから、あとで着て見せてね」
「……姉さま……ありがとう」
ソラーレも喜んでくれたが、デッカの所で採寸していた時の喜び方ではない。
一瞬だけ私に何かを言おうとした気がする。
「ソラーレ……」
「わっ、私には? ノチア私には?」
「プリンには陶器を買ったでしょ」
「わっ、そうだった! ちょっと待ってて」
そういうとプリンが走って部屋を出て行く。
戻ってきた時に、手にあの陶器をもっていた。
「プレゼント。渡して! プレゼント!」
そういって陶器を渡してきたので、改めてプリンにプレゼントとして渡した。
「これで同じ。わっ、ありがとうノチア。プレゼントうれしい」
食事もプレゼントも終わったのでお風呂に入る。
しかし、お風呂の時もソラーレの様子がおかしかった。
私はお風呂上りにルーナにソラーレの様子について聞いてみる事にした。
「ルーナ、ソラーレの事なんだけど……」
「お姉さま! 今日はお姉さまの部屋で寝てもいい?」
「えっ? どうしたの急に」
「今日はお誕生日だから一緒に寝たいの。いいでしょ?」
「ええ、いいわよ」
「わっ、ルーナも一緒に寝るの? 楽しみ」
ソラーレの様子について聞きたかったが、お風呂場ではタイミングを逃してしまった。
一緒に寝るのでその時に聞こうと、ベットに行く前にルーナに話しかけようとするとノックの音が鳴った。
扉を開けると、訪ねてきたのはソラーレだった。
すかさずルーナが私の前に出てソラーレを部屋に入れる。
「姉さま、ソラーレも一緒に寝たいんですって!」
「ソラーレも? 嬉しいけど珍しいわね」
「姉さま、ボク……」
「ほら! ソラーレ入って! 私はこっちソラーレはここ!」
「わっ、プリンはここ! ノチアの隣!」
ルーナが強引にソラーレをベットに連れて行ってしまう。
ソラーレ、ルーナ、私、プリンの並びでベットに横になる。
間にルーナが入ってしまったのでの、ルーナに聞くのもソラーレ本人に聞くのも難しい。
(今日はこのまま寝るしかないよね。しょうがない、今日は久しぶりの弟妹成分補給って事で、明日ちゃんと聞こう)
ソラーレは何かを話すために私の部屋に来たのだろうか?
ルーナはそれに気がついていて、わざと引き延ばした?
そう仮定しても理由がわからない。
私の中に不意に形のない不安が浮かぶ。
目を閉じるが、その不安からすぐに眠りに付くことが出来ず私は二人の寝顔を見続けた。




