74 弟妹とプリンと回るラウメ
私たちはフェロンを使って味噌の作成をしたが、完成するまでは半年以上は時間がある。
そのため、ひょんな事からプリンの面倒を見ることになった私の都合もあって、一度それぞれの領地に帰る事になった。
そして、気が付けば街道の整備などでバタバタしている間に、私はもうすぐ十二歳になる。
だが、私よりも先にルーナとソラーレの誕生日がきて二人が五歳になる。
「ルーナとソラーレは何がお誕生日に欲しい?」
「ルーナ、アイラおねぇ様からの花束が欲しいわ」
「ルーナ、アイラじゃなくて私からのプレゼントよ?」
「ボクはガンタイが欲しい。右目の力をふういんしないといけないの」
「目が悪くなるから、病気でもないのに眼帯はしちゃだめよ?」
「わっ、プリンは光る石が欲しいわ」
「そっか、探しておくね」
欲しい物でラーメン関係しか浮かんでこない私は、毎年ルーナとソラーレのプレゼントで悩んでしまう。
母様は二人に似合う服を編んでいるし、父様も机を上げる予定だ。
自由になるお金が限られている私にプレゼント出来るプレゼントはそう多くないが、できうる限りの物を送りたい。
「ここは他の人達の意見も聞いてみるのが一番ね。プリン、出かけるわよ」
「姉さま出かけるなら私も」
「ボクも行く」
「わかったわ。メンマお願い」
「メメ~~~」
メンマも気が付けば大きくなっていた。
成体ではないのだけど、大きさは前世の羊の倍はすでにある。
プリンとルーナ達を乗せてもまだまだ余裕だ。
「ウチが護衛に付くっすね~」
「お願いしますテスラさん」
まず向かったのはエドガーのところだ。
最初の頃に、私の我儘を聞いて農業を教えてくれたエドガーも、最近ではすっかり他の農家の顔役になっている。
私はエドガーに子供に何を上げているか聞いてみた。
「家は美味いもんを食うくらいですね。妻は人形を作ってあげたりします」。あとは、木を削って積み木くらいでしょうか」
「あるほどね~」
「わっ、崩れた。ノチア、難しいぞコレ」
次に行ったのは教会だ。
孤児院への資金の支援や教育の実施は、今では私の仕事だ。
ここで神父にプレゼントを聞いてみる。
「子供たちにプレゼントですか? 普段から私たちは服を頂いたり、野菜などを頂いたり、受け取ってばかりです。誕生日などは美味しい物を食べて、女神とノチア様に祈りをささげています」
「ええ! 祈りだなんて……ありがとうございます」
「姉さま、すごいです!」
ツテゾのポーション屋に行ってみる。
安価の新型ポーションの売れ行きもあって、ツテゾの店は大きくなった。
従業員も増えて、今ではツテゾはポーションの研究に専念している。
「ノチア様、ようこそお越しくださいました」
「久しぶり、ツテゾいきなりなんだけど、今プレゼントのアンケートを取っているの、ツテゾだったら何が欲しい? 何を上げる?」
「私でしたら、やはりポーション関係の本でしょうか。上げるとすれば……」
「どうしたの? 顔が赤いけど?」
「あああ上げるとしたらですね? ゆっ指輪とかかかっ」
「指輪? 結構高価なものを上げるのね。でも、子供には高価過ぎない?」
「子供! ああ、そうですね。あはは」
「このお兄ちゃん顔真っ赤だね」
「ノチアお姉さま、私もポーションの本が欲しいわ。お願い」
「私の本で良ければ……」
「それじゃダメだわ。アイラ姉さまに相談して、ノチア姉さま」
「うっ、うん、わかったわ。今度聞いてみるわね」
ルーナの強い希望でポーションの本になった。
(お金足りるかな。父様に相談してみよう)
少し遠いがデッカのところにも行ってみる。
そういえば、デッカに弟子入りしていたアヌラ、なんと家のメイドのミアと結婚していた。
体を鍛えた後、思い切ってミアに告白して、見事に射止めたのだ。
しかし、収入の面と商家の跡取りだったこともあって、デッカがアヌラを説得して家に帰したらしい。
最後の日は二人でお酒を泣きながら飲み明かしたと聞いた。
「デッカ、元気?」
「なんじゃノチアか。なんかようか?」
「妹たちに上げるプレゼントを考えてるの」
「嬢ちゃん、隣にいるのに堂々と聞くんじゃな」
「私、あんまりサプライズとか気にしないのよね」
「まあいい。アクセサリーとか作るのか?」
「デッカ、アクセサリーも作るようになったの?」
「んー。まあ、バカ弟子のプレゼントを作ってやるのも師匠の務めじゃしな。挑戦してみると案外楽しいんじゃ」
「へぇ~」
「ボクマントが欲しい。ルキラお姉ちゃんみたいな真っ青なやつ」
「ええ! そうなんだ……デッカお願いできる」
「おう! 坊主、採寸させてくれ」
思いがけず、ソラーレのプレゼントが決まった。
「ふー。プレゼント決まっちゃったわね」
「わっ、私のは? ノチア、キラキラな石よ~」
プリンがねだってきたので石とはちょっと違うけど、ダグの所に行く事にした。
……っと言っても、すぐ隣なのだが。
ラウメ領ではカレーうどんがすっかり定着しているため、ダグの工房も大忙しだ。
ダグのデザインした陶器はアヌラを通じて商人の中でも知られるものになって、一部には熱狂的なファンも付いていると言う。
弟子が三人も居て、今では立派な親方だ。
「ダグ、久しぶり」
「ノチア様、良く来ただよ。今回も丼の作成だか?」
「ううん、顔を見たかったのと……」
「わっ、綺麗な石が欲しい。これ綺麗! これも」
「わかる? それは霊峰ファナでも結構奥で取れた泥なんだ。きめの細かさと粘り気を両立した粘土に釉薬を付けて、火の流れを呼んで作った一品だよ。火の流れは一期一会、その模様は二度と作れないその時々の奇跡を描き出してるんだ」
「ポポンはダグの作品になると相変わらずね」
「わっ、ノチア! ノチア! これが良い」
それは炎の揺らめきをイメージした花瓶だったが、すこしフェロンに似ていた。
「これでプレゼントは完璧ね。あとは戻ってケイシーさんと一緒に誕生日用の料理を考えなきゃ」
春の日差しは暖かい。
たまにはこんなのんびりした日も良いものね。




