66 料理対決より先にやるべき事
「なるほど、フラウ姫は豆を良く食べてらしたと」
「ノチア、そちも負けてないでわらわの情報を集めるのじゃ」
「はいはい。フラウの好みねー。食べ物なら何でも美味しい美味しいって食べてるじゃない」
シリオスがフラウの土地に住まう他の人たちから情報を得ようと動き回っている。
一緒に動いてみると、フラウの領地……でいいのか?
フラウ領にはフラウの眷属以外にも住んでいる種族が多かった。
あまり王都では見ない少数民族が多いようで、三つ目のアミテル族や背中にヒレのあるフィンデ族など多種多様だ。
魔物に近い外見から、差別された過去があるようで、私達にも最初は警戒して出てこなかったようだ。
「シリオス様は凄いな。僕達より早く輪に溶け込んでいるみたいだ。きっと警戒心を解くのに優れているのだろう」
「ぐふふ。誘惑の魔眼は侯爵家のカリスマか、はたまた元来の人たらしかしら」
「シリオスの人柄が良いのよ」
「人たらしならノチアも負けておらんではないか。わらわを虜にしておるじゃろ?」
「はいはい」
話を聞いて回って気が付いたのだが、フラウの領の人達は、小さい頃に逃げるように来た者やその二世、三世の者が多いようで、文化というか知識が途絶えてしまっている者が多く、暮らし方が若干原始的な気がした。
もちろん元々の生き方がそうである種族もいるのだろうが、街道の整備によって、外から人が入ってくる可能性が出てくる状況になれば、トラブルの原因になりそうだ。
「フラウ、秘書と言うか、外交や内政に携われる人材をフラウ領に受け入れる事はできない? 人間が嫌ならそういう人材を探したりできないかしら?」
「あん? なんじゃ? 文句がある奴はわらわが蹴散らせばよいではないか」
「それじゃあ、霧で閉ざされたころに戻るだけだし、美味しい物を食べられなくなるわよ?」
「うーん。仕方ないのじゃ、わらわで当たってみるわ。それとノチア達の信用の出来る者ならば、受け入れても良いぞ」
「ノチア、ならば僕はメリナ姉さんに頼んでみるよ」
「ぐふふ。我が兄の力を借りることにするわ」
「本当? じゃあ、一度それぞれの領地に戻って話を通しましょう」
もちろんこの話はシリオスにも伝えた。
シリオスも他の住民の話を聞く中で、同じ結論に至っていたようで、領地に戻って話を通す様だ。
「ふん。あの男の連れてきたものなど受け入れてやらんがな」
フラウはそんな事を言っているが、シリオスの事を憎からず思っているのはやり取りを見てわかる。
それから私たちは三人でそれぞれの領地に戻って人材確保にいそしんだ。
っと言っても、私はそこまでラウメでの人脈が広いわけではないので、ほとんどは父様任せだったが、意外な人物から人を紹介された。
それは、孤児院の神父様だ。
私が始めた孤児院の教育は、私がダイアに行くようになってからも続けられていて、そこで学んだ孤児の中には、フラウの領に住んでいる兎耳のヘーレン族の娘もいたのだ。
「ノチア様、トーアと申します。このような機会をいただき感謝の言葉もありません」
「本当に良いの? ラウメから離れることになっちゃうけど」
「私と同じ種族も住んでいると聞きました。役に立てるのなら悔いはありません」
「じゃあ、お願いねトーア」
「はい!」
トーアが人懐っこい顔で笑った。
トーアは十五才の女の子だ。
私が魔法を教わっていた時に、教会でギースに読み書きや計算を習っていたらしく、最近はミアの下についてラウメの館で働いていたらしい。
そのおかげで礼儀作法も身に着けていて、もしかしたら私より令嬢らしく振舞えるんじゃないかと思ってしまう。
忙しく動き回っていたとは言え、自分の館の事なのに知らなかった事が少し恥ずかしかった。
「人材もそろったし、あとは……」
「ねぇしゃまー」
「弟妹成分の補充ね!」
アイラやルキラも迎えに行かなければならないので、ゆっくりはできなかったが、久しぶりにその日は家族みんなとゆっくりご飯を食べた。




