6 闘争の果に
チャーシューを求めて走った私が目にしたのは、予想外の光景だった。
土砂崩れでもあったのか、大規模に崩れた斜面の手前にグレート・メイはいた。
しかし、その場に居たのはグレート・メイ一匹だけではなかった。
肉食獣らしき別の大型の獣、そして二足歩行の巨大キノコが向かい合っていた。
全員が5メートル級の三竦み。
すでに一触即発の空気が流れている。
「えっ、ええっとこれは⋯⋯」
「なんと、キリングファイターキノコとゴルルル・ガガですか。しかもお互いが牽制し合っている」
私が事態を飲み込めないでいると、シンバさんがテンション高めに解説する。
キノコの方はキリングファイターキノコで間違いないだろう。
エリンギのようなずんぐりむっくりな体に短い手足が少しコミカルだ。
ならばも残ったもう一匹がゴルルル・ガガだ。
ヒヒの様な顔に後ろ足の倍以上はある太い前足。
ヒョウ柄の体毛に長い爪と牙、凶悪な表情で涎を垂らして睨む姿は、まさに狩る側だ。
私が冷静に分析していると、私たちなど眼中に無いといった様子で、キノコがファイティッグポーズを取って、他二匹を挑発するように手招く。
次の瞬間、メイが動いた。
プライドが高いと言われるだけあって、ガガには脇目も振らずにキノコに突っ込んでいく。
しかし、そんなメイの隙をガガは見逃さなかった。
メイの無防備な体に牙と爪を突き立てると全体重を乗せる。
しかし、メイの突進は止まらないかった。
激しい血飛沫が辺りに飛び、わずかに軌道がズレる。
キノコはずんぐりむっくりの体とは思えない動きでそれを躱すが、完全には躱せず笠の一部が宙が舞った。
「迫力がありますなー」
「シンバさん完全に観戦モードになってるわね」
剣をしまい、腕を組んでうんうん頷くシンバさんに呆れるけど、私も動かない。
別に自らの力で討伐したいわけではない。
肉が痛みそうでちょっと嫌だが、漁夫の利が出来るならそれに越したことはないのだ。
出血もあってか、メイの体が揺らいで倒れる。
ガガはまるで勝ち誇ったようにメイを踏みつけると、こんどはキノコに視線を向けた。
感情の読めないキノコとの睨み合いが続くが、さきに焦れたのはガガだ。
前足の筋肉が盛り上がるほどに力を入れると、猛烈な勢いで襲いかかる。
しかし、キノコはそれを待っていましたとばかりに、迎撃の構えをとる。
静かに重心を落とすと、真っ直ぐに強烈なパンチを放つ。
ドゴオ!
空気が爆ぜるような凄まじい音が響いて、次の瞬間にはガガが崖にめり込んでいた。
一呼吸置くと、キノコは土を払うような仕草をし、満足したのかように山の奥へと消えていった。
「⋯⋯終わったのよね?」
「凄まじい戦いでしたなー」
少しの間、立ち尽くしてから状況確認。
シンバさんが走って近づく。
「お肉、お肉は?」
「ガガの肉は駄目そうですね。地面に深く突き刺さっていますし、恐らく内部から爆ぜてしまっています」
「メイの方は? 私のチャーシューは無事なの?」
「はい。これならメイの方の肉はいけます。血抜きは私がしておきますので、ノチア嬢はエドガーたちを呼んできてくれますか?」
「わかったわ」
念願のお肉に心が弾む。
上機嫌になった私は、先程飛んだキノコの笠も拾って駆け出した。
キノコはもう十分に取ったが、これも立派な戦利品だ。
エドガーを呼んでお肉の回収を頼んだ後、ウッキウキで帰った私を待っていたのは両親のお説教だった。
父様だけでなく母様まで、今回のことは見過ごせないらしく、涙が出るまで怒られるはめになってしまった。
「私はチャーシューが作りたかっただけなのに」
そんな言葉は誰に聞かれるでもなく空気を揺らした。
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