59 久しぶりのラウメ
「あーしゃま、お花の冠つくったのー」
「ありがとう、ルーナ。とっても上手じゃないか」
「みぎ目がーうずくー」
「ぐふふ。ソラーレも内なる力に翻弄されるようんなったようね」
「ぴーぴぴー」
屋敷の庭で天使と友人たちが戯れているのを私は見ている。
「ズルいー! ルーナ、お姉ちゃんにはー。ソラーレ、私にも力を分けてよー」
私が手を広げて足をバタつかせる。
「ねぇしゃま。やれやれねー」
「ねぇしゃま。この力はきけんだからメー」
どうしてこうなったの?
私は頭を抱えてしまう。
館に戻った私は、ルーナとソラーレにアイラとルキラを紹介した。
うちの可愛い弟妹は、人見知りすることなくすぐに二人と仲良くなった。
……と言うより、仲良くなりすぎていた。
ルキラに至ってはヒーちゃんにまで好かれている。
私よりアイラとルキラにべったりで、私は寂しさに打ちひしがれているのだ。
『ノチアはみんなに好かれてるから心配ないっしょ! 何があってもそれにワシが味方なんよー』
『ありがとう。ゴウオウ』
ゴウオウに励ましてもらって気分が浮上する。
きっと、ルーナとソラーレをほったらかしていたのがいけなかったのだ。
「そうだわ。明日は天気も良いしピクニックに行きましょう」
「ダメだよノチア。明日はダスティン様と事業の計画と資金決めをするんだろ?」
「うう、だってぇ~」
「ぐふふ……ごほん。ごめんなさい。私の領地のためにノチアには迷惑をかけるわ」
「ルキラ……いいのよ。この計画はラウメの為でもあるんだもの」
アイラの予想では街道の整備計画は一年がかりになると言う。
計画の具体化はダイアでの会合で決めることになっているし、王国への許可取りや他領への根回しはドール領のサーフ伯爵が進めてくれている。
しかし、ラウメでも資金の確保や資材の調達、人材の確保など、独自にやっておく事は山済みなのだ。
確かに遊びに行っている時間はない。
「せめて一緒にお風呂に入りたい! サウナだけでも作っちゃおうかな~」
弟妹成分を補給するためのスキンシップは急務なのだ。
計画で領地からお金が出ていくことになるので、無駄遣いするべきではないのはわかっているが、季節も冬になって水浴びも厳しくなっているのは事実だ。
領民の士気向上にもなるはずだと、体のいい大義名分を考えて、私はお父様に相談する。
「お風呂かい? 実はもう館の中に作っている最中なんだよ。町の方ではもう完成しているんじゃないかな?」
「そうなのですか?」
計画を詰めていく中で、折を見てサウナの設置を父様に提案すると、町にはすでにあると言われてしまった。
私がダイアでお風呂に入った話を父様にした時点で計画は進んでいた様だ。
「ノチアに少しでも令嬢らしいさを味わってもらいたくてね。今日の執務が終わったら、建設中の館のお風呂に案内してあげるね?」
「はい、父様!」
執務が終わって案内されたのは館の裏側で、すでにお風呂用の建物が立っていた。
「全然気が付かなかった」
「まだ、入れる段階じゃなかったから、言わないでいたんだ。ごめんね」
中に入ると、まだ作っている途中と言う話だったが、ほとんど完成していた。
脱衣所には棚も作られていて、全体的に木のいい匂いが漂っている。
それだけで、なんだか気分が上昇した。
「おねぇしゃま。こんなところにいた!」
「おねぇしゃま。きてきて!」
お風呂を見ていると、ルーナとソラーレが来て私の手を引く。
「おとぉしゃまも早く早くー」
「わわっ、どうしたの二人とも」
二人に連れられて食堂に行く。
なんとそこにはラーメンが用意されていた。
「ノチアが執務をしている隙に作らせてもらったよ」
「ルーナ、麺をふみふみしたのー」
「私もアイラちゃんとルキラちゃんに習いながら作ったのよ」
「母様……もう! 私が作ってあげたかったのにー」
二度目のサプライズだ。
またしても、私が作ってもらう形になってしまった。
ちょっとの悔しさはあるけど、喜びがそれ以上に押し寄せてくる。
ラーメンを作るのも、作られるのも最高だ。
皆で食卓を囲んでラーメンを啜る。
ラウメではうどんがあるから、啜る行為には慣れてる。
食べてみると少しだけしょっぱかった。
母様が「失敗しちゃった」と可愛く舌を出していた。
大体の内容を終わらせると、親書を持って父様もダイアへと向かう。
ゴウオウで素早く移動できるので、ラウメに残る母様の手伝いをギリギリまでする。
その間に館のお風呂が完成して、みんなで入った。
「母様、疲れてない? 大丈夫?」
「大丈夫。夫の留守を守るのも妻の務めだもの」
ラウメに残っている間に、デッカにアイラとルキラのマントを作ってもらって、いよいよダイアに向かう日になった。
「じゃ、行ってきます。母様」
「気を付けてね。無理だけはダメよ」
「ねぇしゃま。お花」
「ルーナ、花冠作ってくれたのね」
「ボクも一緒に作ったよ」
「ソラーレもありがとう」
うん。
弟妹成分充填完了。
「これなら三日は大丈夫ね」
「ノチア、それはさすがに短いよ」
アイラにツッコまれてみんなで笑った後、私達はダイアに向けて飛び立った。




