58 ノチアの妙案
「ムーハス湿原に王都までの街道を通すのですか?」
私の発言にびっくりしたのか、ルキラが素で返してきた。
「そうよ。ラウメとしても王都まで回り道しなければならないのは大変だもの、この際だからダイアとドールの中間から東に向けた街道を通してしまいましょうよ」
そう、この話はラウメにとっても大きいのだ。
ラウメと王都の間には、霊峰ファナ、グロス湖、ムーハス湿原が存在する。
それはまるでドーナツの穴のようなものだ。
端から端に移動するには、大きく回り込むしかない。
ラウメはそのせいもあってミラン領とダイア領をつなぐ要衝で有りながら、辺境のレッテルを張られてしまっているのだ。
「うん。悪くないかもね。それならダイアも共同として出資するメリットがあるからお父様も説得しやすい」
「もちろん、ラウメも出資するわよ」
「ぐふふ。そうすればまた至高の三柱の狂宴ね」
「それだけじゃないわ。今回の事業にはデュークも巻き込もうと思ってるの。ドラゴン騎士には借りを作ってるし、空から偵察することで最適な地形を探せると言うのが大きいのよ」
「ノチア、そこまで考えてたのかい?」
「ええ、伊達に何度もドールからラウメを往復してないわ」
「じゃあ、地形を探索する時は僕も乗せておくれよ。地図の作成は必要だろ」
「ぐふふ。それなら私の方を乗せるべきね。我が左目に景色を焼き付けようぞ」
よかった、二人もかなり気合が入ったみたいだ。
「そうだ。今回の事業の説明をしなきゃいけないし、サーフ様に許可を貰ったら説得もかねてダイアとラウメを三人で回らない? 私の弟妹も紹介したいの」
「ノチアの弟妹かー。ノチアに似て可愛いんだろうな。もちろん行くよ」
「ご家族に会うなんて……ぐふふ。これも縁からの宿縁ね」
「ルキラ、それでは意味が二重になっているんじゃないか」
「ぐふっ……気のせいですわ……」
話が纏まったところでドールに帰り、サーフ伯爵に事業の説明をする。
よりよい返事がもらえそうなので、ヒューリを通してデュークに連絡を入れる。
事業の推進を承諾してもらい、ダイアのシュリン伯爵と父様に協力の打診の手紙を書いてもらう。
テスラさんとアイラの従者に帰る事を伝えて馬車で出てもらい、ゴウオウを呼んだ。
「三人だけど大丈夫?」
「問題無いよん」
「ぐふふ。ゴウオウよ、また縁が交わったようね」
「僕は一番後ろに乗るよ。ノチアは真ん中かな?」
「わかったわ」
ゴウオウが空に飛び立つと、それに反応してドラゴン騎士が三人並走する。
デューク以外は私の事情を知らないので、騎士たちは目を見開いて驚いていた。
だが、乗せているのは竜の気まぐれと公式でなっているので、私は関係ないと言う顔をしてやりすごした。
余談なのだが、ガストルとドールの険悪さは今回、かなり危険なレベルにまでなっていたらしい。
ガストルはドールとの境に兵を派遣して軍事練習する挑発行為を繰り返していた。
その後に私の飛行でドールの上空に頻繁にドラゴン騎士が飛び交う事になり、何も知らないガストル側は警戒してそれ以上の事が出来なくなったらしい。
私のドラゴン振り切り事件が、そんな事の役に立っていたとは、世の中なにが役に立つのか分からないものだ。
「ルキラはダイアに行くのは初めてなんだよね」
「姉さん達は絶対ルキラの事を好きになるから覚悟しておいてね」
「ぐふふ。……お手柔らかにおねがいしますわ」
話をしている内にダイアが見えてくる。
今回は隠れたりせずに、そのまま館の庭園に着陸する。
さすがに驚かせたようで、すぐにサリアさんが走ってきた。
アイラの見込みは当たっていたようで、ルキラを見たサリアさんはすぐにメリナさんと二人でルキラの着せ替えをしていた。
「そうだ、私のマントみたいな装備を作っておく? 寒くはないけど、ルキラはスカートだし」
「ぐふふ。わが身から溢れるオーラを隠すには時には衣も必要ね」
「僕はズボンだけど、欲しいな。ノチアと同じ色で作ろう」
「あっ、ズルい。私も」
その後は、シュリン伯爵の判断とデュークの来客を待って、数日過ごした。
「あとはラウメね。ルーナもソラーレも元気かなー」
「ぐふふ。良い武者震いね」
「ルキラ、震えすぎだよ。緊張しなくてもダスティン子爵もマリア様もとても素晴らしい人だよ」
「ありがとうアイラ。でも、本当に緊張しないで大丈夫よ」
気合を入れてラウメに飛び立つ。
本当に久しぶりに感じる。
皆の顔を思い浮かべてラウメを目指した。




