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凄い加護を貰いましたが、私の夢はラーメンですよ女神様!  作者: 千両
三章 ノチアの為の工房作り

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55 アハトでの会合

「はははっ、ノチア、僕を捕まえてごらん」

「アイラ、ちょっとハシャギ過ぎよ」

「ぐふふ。我が内になる力も暴走を止められそうにない!」

「あんまり離れると危ないっすよー」

「メーメメー」


 海岸を走る私たちをテスラが、注意した。


 私たちは、使者として海辺の町アハトに来ている。

 ルキラが自分も領地の仕事を手伝いたいと言った事で、伯爵がアハトの町の商人との意見交換の使者としてルキラを派遣したのだ。


 アハトは他国と貿易している交易の町だ。

 今日は、その貿易を取り仕切っている商会長との会合になる。

 ルキラの緊張を解すために、海辺で気分転換しているのだ。


「ルキラ、少しは緊張は解けた?」

「……まだ。でも、ノチアが一緒なら……ぐふふ。我が魂の半分は其方に任せたぞ」

「ルキラ、僕がいるから心配しなくていいさ。ノチアは僕の隣にいればいいと思うよ」

「ぐふふ。我の半身は我の隣にこそ相応しいようだが?」


 二人の中もだいぶ深まっているみたいだ。


「なんだか私たちチームみたいね。一蓮托生って感じだわ」

「「……一蓮托生」」


 時間が近づいたのか、ルキラに新しく付いたメイドのコラユルが呼びに来た。

 コラユルは髪をきっちりと纏め上げていて、視線も鋭く性格も厳しそうな人だ。

 人見知りのルキラに初めて付くメイドとしては、意外な人選だと思った。


「会合の準備が整ったようです。こちらにおいでください」

「さあ、行きましょう。ルキラ。アイラ」


 案内されたのはグレンツェ商会の一室だ。

 豪華な調度品の飾られた廊下を抜けてその部屋に入ると、すでに揃って待っていた商人たちが立ち上がる。


「あっ……わた」

「こちらはドール領主サーフ伯爵が長女ルキラ様でございます。そして、ご友人のダイア領のアイラ様。ラウメ領のノチア様にございます」


 慌てて挨拶をしようとしたルキラの前にコラユルが素早く出て、私たちを紹介する。

 紹介された私たちはそれに合わせて軽いお辞儀をする。

 ブンシェが私を見て、一瞬白んだ顔をしたように見えた。


「お初にお目にかかります。グレンツェ商会会長のブンシェと申します」


 最初に挨拶した真ん中の商会長は、恰幅のいい男性だ。

 派手な帽子に髭、指には宝石の付いた指輪が光っている。

 そして、その眼にはこちらに対する侮りが伺えた。


「私はクラハト商会のスドレと申します。以後お見知りおきください」


 続いて右側の商人が挨拶する。

 スレドは瘦せた体形に、オールバックの男性だ。

 目つきは鋭いのだが、姿勢が悪く汗をハンカチで拭いている。


「私はオンリー商会のアルティと申します」


 三人目に名乗った左の商人は若い女性だった。

 茶色のクセっ毛のショートヘア―で、目には力が入っている。


「あら、商品は無いのかしら? 商人が集まると言うから楽しみにしていましたのにー」


 急にアイラが頬に手を当ててぼやく様に言った。

 そんなアイラの態度にコラユルが乗っかるように話す。


「申し訳ありません。これは面通しですのですぐに終わります。終わったら買い物の続きをいたしましょう」

「いやはや、お時間を取らせてしまって申し訳ない。手短に用件だけを済ませてしまいます。おい!」


 ブンシェが進行役になると、スレドが資料を出して話始める。


「この度のガストルの通行料の上昇は、商人たちの間にも不満が出ております。商人の中には領主様に対して『上がった通行料の責任を取って、しかるべき額の補填を』と言う意見が出ています」

「何を無礼な! そんなもの仕舞っておけ! ……申し訳ありません。商人すべてがそのような考えの物ではありません。しかし、そのような意見があることも了承していただきたい」

「申し訳ありません」


 スレドをブンシェが叱責すると、スレドが資料をしまって謝罪する。


「ルキラ様、私には難しくて良くわかりませんわ。早く終わらせて買い物に行きましょう」

「そうですな。これは大きな事態に発展しかねない難しい問題です。しかし、私にいい考えがございます。ガストルに対して、南の端の漁村エントを貸し出すのを条件に交渉するのはいかがですか? 私がたいした価値もないエント一つで通行料を下げてごらんに入れます」

「! ――っそれは!」

「それはよろしいですわんねー。じゃあ、契約書を作ってくださいまし」

「はい、ではそのように」

「契約書ならありますぞ。ささっ、こちらにサインを」


 アルティがガストルの提案に意見しようとするが、アイラが強引に賛成した。

 すると、ブンシェが契約書を取り出した。

 アイラはそれを受け取ると、さっと目を通してルキラに渡す。


「これで買い物に行けますわね」

「あっ、契約書は!」

「ちゃんと後でサインして渡しますわー。それより買い物です。私もう我慢できませんもの」


 有無を言わせない雰囲気でアイラがそのまま部屋を出たので、私たちも続く。


「ふざけた契約書ですわ。エントに価値がない? 南の端を貸し出したら、そこからガストルも貿易に乗り出すじゃないの! 回りくどく書かれていても見る者が見れば不利な契約の事は一目瞭然よ」


 商会から出てテスラと合流すると急にアイラが憤慨した。

 ルキラがアイラの変わりように目を白黒させていたが、渡された契約書に目を通すうちに真剣な顔になる。


「大体、あの目が許せませんわ。ノチアの領がラウメと聞いて、嘲るような視線を向けてきて!」


 アイラに言われてブンシェの顔を思い出す。

 やはり、あの顔はそういう事だったのだろう。

 私を連れていることで、ルキラの事も低く見ていたのかもしれない。

 アイラはそれを見越した上で、交渉には興味のない令嬢を演じたというわけだ。


「コラユル、こちらの契約書をお父様に届けて、しかるべき対処をお願いして」


 ルキラがメイドのコラユルに指示を出す。

 コラユルは了解しましたと頷いて足早に行ってしまった。

 彼女の動きは、メイドと言うより文官のようだ。

 伯爵はちゃんと交渉の助っ人としてコラユルをあてがっていた様だ。


「さて、私たちはオンリー商会に行きましょうか」


 そこで、アイラが意外な目的地を言った。


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