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凄い加護を貰いましたが、私の夢はラーメンですよ女神様!  作者: 千両
三章 ノチアの為の工房作り

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54 いよいよ、実食!

 手を合わせた後に目を開ける。

 立ち上る湯気が私の頬をそっと撫でて、出汁と割り下の混ざって起きた化学反応で生まれた誘惑的な香りが包み込む。


 アイラは私のリクエスト以上の事をしてくれたみたいだ。

 ラーメンスープ構想から、ただしょうゆを作るだけではなく、出汁と合わせた後の事も考えて割り下まで完成させていたのだ。


 今日が初めての合わせだったが、二人の相性は抜群だったようだ。

 出汁の熱で醤油の香りが立ち、一本芯の通った香りを作り出す。

 胸いっぱいにそれを吸い込んだ私の頬に熱がうつって上気して緩む。


「これだけで、もう幸せ……本当に幸せ」


 まずはスープを一口。

 口の中で、醤油と出汁の香り、塩気とほのかな甘みがバランスよく絡み合う。

 赤褐色に澄んだスープには、鶏の旨味と野菜の甘みがふんだんに溶け込んでいて、しょうゆ独特の大豆の香りもする。


「大豆なんて入っていないのにね」


 それがおかしくて、思わず笑いがもれてしまう。

 お箸で差し込み、麺を持ち上げる。

 日の光の中で揺れる麦畑を、そのまま写し込んだような黄金色の麺は、緩く波立つ縮れ麺。

 私はそれに息を吹きかける。

 誕生日ケーキの上のろうそくを吹き消すようなワクワクがたまらない。


(お箸で持ち上げられた姿は、なんて絵になるのかしら)


 ラウメではうどんが流行したこともあり、お箸を使える人が増えた。

 いざ使えるようになると、こんな便利な食器は他にない。


(前世ではお箸の評価は高かったし、こっちでも流行らないかなー)


 アイラとルキラの分もお箸は用意した。

 使ってくれたらうれしいな、そんな思いでアイラ達に目を向けると、三人が私の事をジーっと見つめていた。


 それに気が付いてから、私は急に恥ずかしくなってしまった。

 思えば、ルキラのスライム麺を啜った時は盛大にむせてしまったし、こちらの世界でも食事では、あまり大きな音を立てて食べることはない。

 気心の知れた相手だけれど、注目されたまま啜るのは、なんとも恥ずかしい。


「えっ、えっと……三人も食べていいのよ?」

「気にしないでいいよ。それに、まずはノチアが食べないと始まらないさ!」

「ぐふふ。一番槍の称号はノチアに譲るとするわ」

「そうっすよ、ノチアっち。豪快に行くっすよ」

「あっ、ありがとう……?」


 三人に笑顔を向けられれば、もはや後戻りはできない。

 改めて麺と向かい合う。

 見られているせいか、変に意識してしまう。


(もー。誓いのキスでもないんだから。って、何考えてるのかしら)


 なぞの緊張で自分でもよくわからなくなってきた。

 覚悟を決めて麺を掬いなおし口に運ぶ。


 ちゅるちゅるん!

 なるべく音を立てないように数本を啜る。

 麺が口の中に滑り込んでくる。

 噛むと小麦の香りとプリっと切れる食感が気持ちいい。


「……おいしいよー」

「僕たちも食べようか」

「そうしましょう」

「いただくっす」


 言葉にならないとはこの事だろう。

 もう自分の顔がどうなっているのかわからない。

 美味しさで頬が落ちるのなら、思いがプラスされた味は何がどこまで落ちるのだろうか。


 ラーメンの美味しさ。

 皆で食べられる喜び。

 完成させた達成感。

 焦がれに焦がれてたどり着いた味に、今は名前なんて付けられない。

 ただ一口一口を丁寧に味わう。


 ――ズルルルル。

 音の方を向くと、テスラがラーメンを啜っていた。

 さすがは冒険者のテスラさん。

 男らしい啜り方には惚れ惚れする。

 自分もあれくらいすればよかったと少しだけ嫉妬してしまった。

 でも、満面の笑みをされたら、そんな嫉妬もすぐに霧散してしまった。


 次にアイラを見る。

 相変わらず所作が綺麗だ。

 初めて使うはずなのに、お箸の使い方がすでにサマになってきている。

 テスラを見て、自分も麺を豪快に啜りたいと思ったようで「熱いっ」と慌てていた。

 「火傷に注意してね」なんて言うと耳まで真っ赤になっていた。

 なんでも卒なくこなすアイラが苦戦している姿が悪いと思いながらも可愛いと思ってしまった。


 最後にルキラを見る。

 麺自体はスライムで作っていたようだが、あれは啜るものではなかった。

 そういった意味では、啜るのはルキラの方が苦手そうだが、私の真似をしてなのか、一本ずつちゅるちゅると食べている姿がなんとも微笑ましい。

 笑顔で見ているとルキラと目が合った。


 ――グスン。

 ルキラの目に涙が溜まったことで私はびっくりした。


「ルキラ! ごめんなさい。別に馬鹿になんてしてないわよ」

「違いますノチア様……嬉しくて。そのありがとうございます、前を向くきっかけを与えてくれて……こうして誰かとご飯を食べる喜びを与えてくれて。私、ノチア様に出会えて本当によかった」


 涙のまま笑顔を向けてきたルキラにドキリとする。

 すると、アイラも言葉を重ねるように話し出した。


「僕もさ! ノチアの行動にどれだけ勇気づけられたかわからないよ。僕の世界はノチアが広げてくれたんだ」


 二人の好意に頬が赤くなる。

 そんなのは私だって一緒だ。


「そんなのお礼を言いたいのは私だって同じよ。これまで……ううん、違うわね」


 私は言葉を切って、三人を見まわす。


「これからもよ! 私は三人にいっぱい手伝ってもらうの。だから、これからもよろしくね」

「ドンと任せろっすよー」


 テスラがおどけたことで皆で笑いあう。


(ああ、やっぱり皆で食べるラーメンは最高だわ)


 絶対に世界にも広げないと!

 改めてラーメンを布教する決意を固めてラーメンを食べきった。

コメントが気に入ってしまったのでサブタイトルに使わせてもらっちゃいました。

暖かいコメントいつもありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
 うん、ラーメンはこうじゃないとね。  小麦の香り漂い。  醤油の味わいと、出汁の旨味が混ざり合う。  みんなで苦労して、ようやく造り上げた、初めての一杯。  旨そうですねぇ。
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