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凄い加護を貰いましたが、私の夢はラーメンですよ女神様!  作者: 千両
三章 ノチアの為の工房作り

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45 離れの塔のルキラ

 一夜明けて、やっとルキラに会えることになった。

 そして、私が通された先はドールの館から渡り廊下でつながった別館だ。

 そこの一室で一人でルキアが来るのを待っていた。

 なんと、この別館にはルキア以外にほとんど人が出入りしていないらしい。


 なぜそうなっているかと言うと、ルキラは極度の人見知りなのだという。

 何度も手紙でやり取りしていたが、手紙からはそんな雰囲気は一切感じなかったので、ヒューリにそう言われた時は驚いたものだ。

 今はルキラがまだ私と直接会うことに緊張していると言うので、覚悟が出来るまで別館の一室で待っている状態だ。


 ルキラがどれくらい人見知りかというと、令嬢であるにもかかわらず、身の回りの世話を他人にされる事すら嫌がって、ほぼ全て自分でやっていると言う。

 私の家は貴族らしくない家だが、それでもかなりな部分をミアやケイシーさんがやってくれている。

 ドールは伯爵の中でも上位に分類される家柄のはずで、その伯爵家の令嬢がメイドの一人も付けていないと言うのはさすがに驚いた。

 話を聞く限り、食事は家族となら取る事があるようだが、普段は館からもほとんど出ない引きこもりの令嬢のようだ。


「とりあえず、ラウメにはいつ帰ろうかなー」


 あまりにも暇であったために、ゴウオウでラウメに帰るタイミングを考える。

 なんといっても、ゴウオウで飛んでも十二時間もかかるのだ。

 最初は日帰りしようなんて考えてはいたが、さすがに無理な事は私でもわかる。

 毎日帰ることは出来なくはないが、それではドールにほとんどいられる時間がない。

 何のために来たのかもわからないし、ルキラに対してもそれでは失礼だろう。

 そんなことを考えていると「ゴッ! ガッ!」っと固いものを叩くような音が奥の扉からする。

 ルキラしかこの館にいないので、音を立てている主はルキラで間違いないはずだ。


「なんの音だろう? ……まさか金目の物を狙った侵入者とかじゃないよね?」 


 さすがに領主の館に賊が入るわけはないとは思いながらも、音の出所を確認せずにはいられない私は、悪いと思いながらも扉を開けて音の方向に廊下を進んでいく。

 叩く音は尚も続いている。


「この部屋からだわ」


 うっすらと扉が開いているようで、隙間から光が漏れていた。

 私はなるべく音を出さないように、慎重に扉を開けてのぞき込む。


「ひっ!」


 ガシャン!

 のぞき込んだ瞬間にひときわ大きい音がした。

 そしてそこには、全身を真っ赤に染めて刃物を持つ少女が立っていた。

 少女は驚いた顔で私を見た後に、笑い始める。


「……ぐふふ。我が張った気配の網を軽々と越えてくるとは、妖精でも味方につけたか、驚きましたわ」

「ルキラ様ですか? ごめんなさい。驚かせてしまいました」

「ルキアなど仮の名、我が真名はルネディ・キアン・アランツェ。ようこそノチア、鮮血の宴に招待して差し上げま……っぶしゅっ」

「「…………」」

「っくしゅっ! ぶしゅっ!」

「「…………」」


 ルキラと見つめあったまましばらくの沈黙が流れる。

 すると、次第にルキラの顔が赤く染まっていく。


「ぐふふ。不浄が風を呼び寄せてしまったようね。穢れ払いの儀式に入らなければならなくなってしまったわ。……あの……ノチア様……少しお待ちになって……くださいー!」


 顔を押さえて、そのままルキラが走ってどこかに行ってしまった。


 その後、しばらく帰ってきそうにないと感じた私は、ルキラがひっくり返したボールを片付けて床を拭いておく事にする。

 自分の事は全部ひとりでやっていると聞いていた通り、台所は調理道具がしっかり充実していた。

 作りかけの料理が置いてあるので、もしかしたら私のためにご飯を作っていたのかもしれない。


 一時間ほどして帰ってきたルキラは、しっかりお風呂に入ってきたようで、若干顔が上気していた。


「ぐふふ。悠久の時を凝縮するのに手間取ってしまってわ。お待たせしました」


 ボールをひっくり返した事で真っ赤に染まっていた髪も綺麗に洗われていて、バブーシュカの下に綺麗な濃い藍色の髪が艶めいている。

 しかし、斜めにカットされた前髪の間から片目だけ覗いている瞳は、気まずげにそらされていた。

 服装は、髪と同じ紺色のドレスにそれより少し濃い色のリボンが散りばめられていて、フリルもふんだんに盛られていて可愛い。


「ぐふふ。それでは闇の宴の準備の続きといたしましょう」

「そうね。作りかけのご飯を完成させてしまいましょう」


 言ってることは難しくて理解しにくいが、身振り手振りが意外と多いので、ボディーランゲージでもなんとかなった。

 ご飯を完成させて、私が最初に待っていた部屋に運んで、一緒に食べる。


「ぐふふ。濃縮されたカシカの悲鳴が我の体を満たし糧になっていくのが実感できるわ。濃度は完璧のようね」

「塩加減もばっちりです。ルキラは料理が上手いのね」

「ぐふふ。そのような甘言もたまには心地よい。感謝するわ」


 どれもこれも美味しいが、私の食べたかったものではなかった。

 そう思っていると、ルキラの方にしかない小鉢の中を食べようとするルキラが目に入った。


「――っ待ってそれって!」

「ぐふふ。綻びでも見えましたか? って、え?」


 私は全力でルキラの手を握った。

 そして、顔を近づけて叫ぶ。


「麺! 麺ね? 麺でしょ? 麺よね! それは麺だわ!」

「えっ? 麺? ふぇぇ?」


 あまりの勢いにルキラが変な声をあげるが、そんなことに構っていられない。

 それを食べるために私は遥々ドールに来たのだから。

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