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凄い加護を貰いましたが、私の夢はラーメンですよ女神様!  作者: 千両
三章 ノチアの為の工房作り

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44 踊り踊られ踊らされ

「どうしてこうなったのかしら⋯⋯」

「本当に申しわけありません」


 堪らずにボヤいた私の言葉を、隣に立つヒューリが拾って謝罪した。

 いま私はドールの館で開かれる舞踏会に、エスコート役をドール領の次男であるヒューリされながら参加している。


 どうしてこうなったかと言えば、ドールとラウメの親密さをアピールする為だ。

 本来の予定では、今日の昼前に到着した私が伯爵にお目通りをする際に、館で開かれる舞踏会の説明をされるはずだった。

 しかし、ゴウオウで飛んできた私は、本来よりかなりの遅く到着してしまった。

 馬車で順当に到着する時間とゴウオウで飛んでくる時間に差が出る事を、まったく考慮していなかったのだ。

 またしてもポカである。


 そのため、ドールに馬車で到着した私は、何も教えられないまますぐさま着替えさせられて、訳も分からないままに舞踏会に参加させられている。

 父様には話は通っていたのだろうけど、私の不規則な動きのせいで言いそびれてしまったのだろう。

 忘れていた訳ではないと信じたい。


「さあ、父上に会いに行こう」

「そうね。エスコートよろしくお願いいたします。ヒューリ様」


 ちなみに、この世界にデビュタントは存在しない。

 異種族が多く存在する世界ゆえに、成人の年齢を合わせることが難しい事と、貴族としての陛下へ正式な紹介を、加護の洗礼を受ける前のタイミングで行ってしまうためだ。


 ヒューリに手を引かれて伯爵の前に行き挨拶をする。

 まさか、伯爵も滞在の挨拶を舞踏会ですることになるとは思わなかっただろう。


「遠路はるばるよく参られた。歓迎しよう」

「お初にお目にかかります。ラウメ領ダスティン・ライ・ラウメ子爵が長女。ノチアと申します。この度は滞在をお許しいただきありがとう存じます」

「手違いで多少慌ただしくなってしまったようだが、今宵は存分に楽しまれよ」

「ありがとう存じます」


 挨拶を済ませてすぐに壁の花になろうとする私だが、そうはいかなかった。

 男爵や子爵の子息達が私に話しかけてきたからだ。

 その顔にはいくつか見覚えがあった。

 よく見れば、その殆どが釣り書で送られてきた写真の人物たちだった。


(そういう場でもあることはわかっているけど、面倒くさいなー。この舞踏会にカサンドラ様は来ていないみたいだし)


 ヒューリが言うには、伯爵の長女であるカサンドラ様は不参加だと言う。

 私が舞踏会に参加するように取り計らわれたのも、あまり外に出たがらないカサンドラ様に対する他の貴族の不満を解消する意図があると申し訳なさそうにヒューリに説明された。

 父様には話は通しているだろうし、私はその事について思うことはないのだが、無駄な時間に思えてしまう。

 そうしていると、詰まらない事が顔に出ていたのか、集まった中の一人が突っかかってきた。


「おい。わざわざ話しかけてやってるのになんだその顔は!」

「申し訳ありません。どなたでしょうか?」

「なんだと、ガストル領に使えるデモイ男爵の長男の俺を知らないって言うのか! 婚約の打診まで出してやってるのに」


 なんだか勝手にヒートアップした眼の前の男を見る。

 まったく記憶にない。

 確かガストル領の関係者は釣り書の中にはいなかったはずだ。

 そこで私は、私に届く釣り書も事前に父様が弾いている可能性に思い至った。

 つまり、眼の前の男は父様にそう判断される程度の男なのだ。


「ノチア嬢、話し中の所を悪いが一曲踊っていただけるかな?」


 私がどうこの男との話を終わらせようかと思っていると、ヒューリがダンスの誘いをしてきた。

 私は離れるチャンスと思い、ヒューリの手を取って頷く。


「ヒューリ様、よろしくお願いいたします」


 ダンスが始まるとなるべくその場から離れるように移動しながら踊る。

 ヒューリが踊りなれているのか、リードに合わせるだけでとても踊りやすかった。

 よく考えたら、こうやって夜会で踊るなど初めてだ。

 意識すると急に恥ずかしくなってきた。

 ラウメのお祭りだったら人前で踊るのは平気だが、貴族としての踊りはなんとなく気恥ずかしい。

 一曲が終わると、私は逃げるように離れた。


「おい。田舎者! 俺とも踊れよ」


 せっかく離れたのに、空気が読めないさっきの男は粘着質に今度はダンスまで申し込んできた。

 当然受けるつもりは無かったが「田舎貴族はダンスの作法も出来てないのか? お前の父親も下手すぎて教えられないんだろうな」とバカにされたので、私は受けることにした。


(ラウメと父様をバカにしたのは絶対に許さない! 恥を存分に掻けば良いわ)


 私は全霊を持ってダンスに挑んだ。

 見かけは優雅に、されど苛烈に踊る。

 すぐに男の目に焦りが浮かんでくる。

 足など踏まない、でも恥はかかせる。

 私は魔力を操作して、男のベルトをバレないように少しずつ切断する。

 ダンスに必死の男はまるで気が付かず、ついにはベルトが切れてズボンが落ちた。


「きゃーーーーー!」


 男の失態に会場に悲鳴が上がり、男はズボンを必死に上げながら逃げていった。

 ざまぁみろと内心で笑っていると、別の男性が話しかけてきた。


「ずいぶんと酷いことをしますね。ノチア嬢」

「⋯⋯デューク様」


 それはダイアで会ったドラゴン騎士のデュークだった。

 デュークが合図を送ると、すぐに音楽が鳴り会場に平穏が訪れる。


「一曲お願いします。私のベルトは切らないでくださいね」

「まぁ、何のことを言っているのかわかりませんわ」


 そう返しはしたが、デュークの目は笑っていない気がする。

 ゴウオウの事までバレているんじゃないかと、冷や汗が止まらなかった。


 正直、ダンスが終わった後の事はほとんど覚えていない。 

 夜会が終わり、伯爵に与えられた部屋に戻った私は、極度の緊張からその後すぐに眠ってしまった。

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