30 中華包丁のための慰め
「ワシ自信失くしちゃったもん⋯⋯」
「しっ、試作なんだし仕方ないよねー」
ことごとく剣が折れてしまったことで、デッカが萎びてしまった。
このままでは私の中華包丁の制作に支障がでてしまう。
私はなんとかデッカを励ます方法を考える。
「ほら、コンセプトは上手くいったじゃない? 重さで威力を上げるとか」
「折れたもん」
「次のは、折れなかったし」
「グニャグニャになったもん」
「最後のは⋯⋯どんな剣だったの?」
「ああー。アレこそが切れ味を追求した奴じゃったんじゃ! なんでそれが切断させとるんじゃ! 一番の自信作じゃったんじゃぁああ!」
デッカはついに地面を転がり始めた。
私はこれ以上何か言おうとしても、変なことしか言わない気がして口をつむぐ。
アイラが慰めようとしているが、いまいち効果はなさそうだ。
すると、そこで頭の中に声が響いた。
『おーい、ノチアー』
(その声はゴウオウ? どうしたの急に)
『どうしたの~ではないじゃん? いつになったらワシの所に来てくれるんよー』
(あっ)
『あって言ったっしょいま。マジ忘れてるとかひどいんよ!』
怒っているようだが、妙に軽いゴウオウの口調に思わず力が抜ける。
忘れていたのは事実だが、お礼なんてそもそも求めてないのだからしょうがないじゃない。
しかし、そこで私の目に転げ回るデッカが入った。
ゴウオウとデッカの間には因縁がある。
もしかしたら、励ますのにはゴウオウはうって付けなのではないだろうか?
(ねぇ、ゴウオウ。頼みたいことがあるんだけど⋯⋯)
『頼み? ええよー。じゃあ、そっちに行くっしょ』
「あっ!」
止めるまもなく交信が切れる。
そして、ゴウオウが近づいて来ている気配を感じた。
前にパスが繋がったとか言われたが、実際に意識してみると確かにゴウオウを感じることができた。
「まあ、この工房は町から少し離れているから大丈夫かな?」
いま気にしても仕方がない。
ヒューリなら追求はしてこないだろうと楽天的に考えことにした。
そうこうしている内にも、ゴウオウが到着して凄まじい風が起きる。
「なっ、なんじゃ! むっ、貴様ゴウオウか! ワシに何のようじゃ!」
ゴウオウが来たことで、さすがにデッカも正気に戻ったようだ。
(さて、どうしたらいいんだろう? ゴウオウに発破をかけてもらう? それとも落ち込んでたし、褒めてもらった方が良いのかな?)
『このドアーフを褒めんの? なんでワシが?』
(なんか昔、デッカの作った剣をゴウオウが楊枝代わりにしたとかって⋯⋯)
『楊枝⋯⋯楊枝⋯⋯ああ!』
ゴウオウが思い出したとばかりにポンっと手を打った。
「あのセンスの欠片もないドワーフか!」
「ギャーーーーン」
それを聞いたデッカが鈍器で頭でも殴られたようにビーンと痙攣したかと思うと、もの凄い勢いで落ち込みだした。
強気な発言や振る舞いに反して、実はかなり打たれ弱いようで、すっかり意気消沈して丸くなってしまった。
「いいもん。もうワシ鍛冶師やめるもん」
(ちょっと、ゴウオウ!)
『おおう、すまん。ワシマジ空気読めん。竜だし』
「センス無いって言うけど、ゴウダン剣は本当に良い剣だと思うけど?」
「おお、それか? ワシがノチアに渡しただけ合ってなかなか良い剣よな?」
その発言を聞いてデッカがピクっと反応した。
「使ってた奴がへっぽこなだけで剣の性能としては本物だったじゃん?」
「そうか⋯⋯本物か」
「素材をもっと厳選すれば、ノチアならワシの鱗もきっと斬れるじゃん?」
「そうじゃろう。そうじゃろう。ワシの最高傑作じゃからな」
ゴウオウの言葉を聞いてデッカが浮上した。
デッカは職人らしく気難しいと思ってたけど、案外チョロいのかもしれない。
(そうだ! お礼はゴウオウの鱗をくれない? それ使えば最高の中華包丁が作れるわ)
『鱗? そんなのでいいんよ?』
「デッカ! ゴウオウが鱗を渡すからそれで最高の中華包丁を作って見せろって!」
「中華包丁⋯⋯」
『ワシそんなこと言ってないじゃん?』
「余ったら剣を作ってもいいから。ねっ? ねっ?」
「わかったわい! 最高の中華包丁を作ってやるわい」
「納得いかんが約束じゃん? ほれ」
「ありがとう。じゃあ、半分にするね。それ」
「「????」」
デッカから制作の了承を勝ち取った私は、ゴウオウから受け取った鱗をゴウダン剣で半分に割ってデッカに渡した。




