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凄い加護を貰いましたが、私の夢はラーメンですよ女神様!  作者: 千両
三章 ノチアの為の工房作り

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25 剣聖で掘る墓穴

「もっ、もうダメ」


 デッカとポポンにこき使われた私が膝から崩れる。

 ダイア領での火入れをした時は、アイラ達の協力もあったから魔力の長時間行使もたえられた。

 しかし、慣れない土の魔法の上に、要求された設備が複雑なのだ。

 少しずつ慣れては来たものの、そろそろ魔力が限界だ。


「もうダグの工房の設備はだいたい出来たし、これで終わりで良いでしょー」

「僕はいいよー」

「嫌じゃ嫌じゃ! ゴウオウがこの町に出たと聞いたんじゃ! 今こそ奴をギャフンと言わせるような剣を打たねばならんのじゃー!」


 デッカが子どものように地団駄を踏む。

 アイラにはポーションの研究の為にツテゾのところに行ってもらっている。

 休憩もしたいし、私は何がデッカをそんなに駆り立てるのか聞いてみることにした。


「なんでそんなにゴウオウにこだわるの?」

「あれは百二十年前のことじゃ、当時のワシは自分の打った剣に絶対の自信があったのじゃ」

「話し長くなりそう? 私帰りたいんだけど?」


 急に真面目な顔で過去を話し始めたデッカを見て帰りたくなった。

 早く家族に丼を見せたい。


 「すぐ終わるわい! ⋯⋯ある日、あやつが急にワシの工房に舞い降りたって『おっ、ちょうど良いのあるじゃんよー』とか言って、ワシの剣を爪楊枝代わりに使った挙句に折りおったのじゃー! なーにが『うわ、モロっ! おもろ』っじゃ! 折れたのはワシのプライドじゃー! ぐわー」


 そう言って頭を抱えながら転げ回り始めた。

 私はダグに目をやって、二人でその場を離れた。


「はぁー。もうお昼を回ってるわよね。ダグはお昼どうするの? ウチで食べる?」

「とんでもねぇ! オラは屋台でノチア麺を買って食べるだすよ。その後は設備の確認するだす」

「そう? じゃあ、私はアイラに声を掛けてから帰るわね」


 ダグと分かれてアイラのいるツテゾの店に向かう。


「アイラー。お昼どうするー?」

「あっノチア、もうお昼なのね? そうですわね。あと少しで実験の結果が出そうですから⋯⋯こっちで食べていくさ」

「そっかわかった。醤油の方もお願いね」

「まかせてくれたまえ!」

(無理に口調を変えなくても良いと思うのに⋯⋯)


 アイラは騎士に憧れているみたいだけど、加護が〝賢哲〟なだけあって、研究している時は実にイキイキしている。

 このまま、私の親友にはぜひ醤油を完成させてもらいたい。


「ノチア嬢、少しよろしいか?」

(げっ!)


 店を出た所で呼び止める声がして私は肩を上げる。

 振り返るとそこには例の特捜兵の隊長さんが立っていた。

 清潔そうな青みがかった髪で目つきは鋭い。

 隊長という立場にいながら年齢はかなり若いようだが、二十才くらいだろうか?

 その若さで隊長に据えられているのだ、きっと能力が高いか、高位の貴族の次男とかではないだろうか。

 どちらにしろ、あまりお近づきにはなりたくない。


「先日の竜についてです」

「あれは恐ろしかったですね。被害が出なくてよかったです」

「⋯⋯冒険者の噂では、隣の領地で竜の願いを聞いて戦った者がいるらしいですよ」

「そうなんですの? 竜から討伐の手伝いをお願いされるなんて凄いですわね」

「討伐を願われたなどとは言ってませんが?」

「⋯⋯」

(ダメー! 私の〝剣聖〟じゃ、墓穴しか掘れないよ。アイラー助けてー)


 私が警戒から一歩後ずさると、隊長は眉をヘニャリと下げた。


「そう警戒しないでください。ノチア嬢に何かするつもりはないのです。申し遅れましたが、私の名前はヒューリ・イレ・ドールです」

「ドール! ドール領の人なの」

「はい。私はそこの次男になります。今回の商人の一件やアージュ豆の独占には我らドールも関わっていますので、ノチア嬢が不利になるような事はいたしませんから安心してください」


 アージュ豆は新型のポーションの材料になる豆だ。

 そして、おもな産地はラウメ、ダイア、ドールの三領地なので、市場をほど独占した形だ。

 王都から素早く役人が派遣されたのもその事を重く受け止めているからだ。

 とくにドール領は元々が侯爵。

 この一件で王都でもかなりの発言権を持ったと父様が言っていた。


「それが竜から授けられたという聖剣ですか?」

「聖剣なんてとんでもない! 作ったドワーフのおじさんも来ているから、紹介しますよ?」

「本当ですか? それは会ってぜひ話を聞いてみたい。それから、妹が会いたがっていると思うので、ドール領にもいつかお越しください」


 そう言うと、ヒューリは丁寧に頭を下げて去っていった。


「よかったー。一時はどうなるかと⋯⋯」


 ゴウオウの件は大事にならなさそうなので、ホッと胸を撫で下ろして私は帰った。

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