20 おいとまの前に
シュリン伯爵に面会の約束を通している間に、私はまずアイラに話した。
丁度、アフタヌーンティーの時間であったために、サリア様とメリナ様も一緒だ。
「わかりました。私からもお父様にお話いたしますわ。我がダイア領はノチアに恩義がありますし、職人の道を理不尽に閉ざされた民の為に動くことは吝かではありませんもの」
「ありがとうアイラ」
「ノチアちゃん、もう帰ってしまわれますのね。まだまだ着せたい衣装がありますのに」
「ごめんなさい。私も皆と離れるのは寂しいですけど、父様や母様、それに弟達にも会いたいのです」
「もうそろそろ、ご誕生されますのよね」
「⋯⋯はい」
そうなのだ。
父様からそろそろ生まれそうだと言う手紙が来たのだ。
移動を考えるとすぐにでもラウメに帰りたい。
生まれてくる弟と妹の事を思うと顔がニヤけてしまう。
言葉に出しただけで、胸の奥に会いたさがこんなにも膨らむものかと自分でも驚くほどだ。
「そういえば、ダグは今どちらに?」
「館に入ることを頑なに拒否していたので、今は庭の一画で休んでもらっているわ。それとデッカとポポンと言うドワーフとノームの二人も連れていきたいのだけれど⋯⋯」
二人の話によると、元々はマリス共和国の出身で、ダイア領では知り合いに工房を借りながら仕事をしていたようだ。
工房ギルドには自分たちで話をつけると言っていたが、シュリン伯爵にも話は通して置いたほうが良いだろう。
「そうね。でも、そこは私もラウメ領に行くから問題ありませんわ。今度は私がラウメ領で視察と交流をいたしますの!」
「アイラ、来てくれるの!」
家族に会いたい気持ちがあったが、アイラと離れるのも寂しかったのだ。
来てくれるなら全霊をもっておもてなししたい。
「あら? ノチアは私を連れ去ってくれるのではなかったの?」
「うんうん! 連れ帰っちゃう」
アイラが私を抱きしめてウインクしたので、私もウインクで返す。
「いいわねー。私も一緒に行きたいですわ」
「お姉様はダイア領でやることがお有りでしょ」
「もう、アイラちゃんの意地悪!」
そんな風に笑い合っていると、執事さんが現れてシュリン伯爵に呼ばれる。
すぐに、ダグも呼んでもらってアイラと共に執務室に向かうと、要求はすんなりと通った。
「うむ。ラウメ領はいま発展の途にある。学ぶことも多いだろう。ノチア嬢を助け、ダイア領の意を示してきなさい」
「やったわー」
伯爵の前なのに私はおもわずアイラを抱きしめてしまった。
——次の日、荷物を全て馬車に入れ終わり、アイラとダグと私でラウメ領に向けて出発する。
デッカとポポンは後から遅れてくると言うので、ついでに陶芸の工房で作ってもらった丼も持ってきてもらいことをお願いした。
本当に実りの多い遊学だった。
隣にはアイラがいる。
私は充実した気持ちで離れていくダイア領を見つめた。




