16 ピーピンバードの巣へ
「まさか、それは聖剣ですの!」
アイラが身を乗り出すように尋ねた。
「いんや。そこそこ斬れる普通の剣だよん。かなり前にワシに挑んできた冒険者をボコボコにした際に捨て台詞と一緒に置いてった剣なんよ。お前さんの持ってる剣よりは斬れるから使うといいよん」
「そうなんだ。持ち主がいらないって捨てたってことだよね。せっかくだから貰っておこうかな」
鍔は金の根が巻き付いたようなデザインで、鞘の装飾もとても洗練されている様に見える。
鞘から刀身を抜くと光を複雑に反射するのか膜の様な光沢がある。
(水たまりに混じったオイルみたい)
「竜から剣をさずかるなんて⋯⋯まるで英雄譚の一節のようだわ」
私が不謹慎なイメージを想像していると、アイラが祈るように手を組んで見つめていた。
「アイラ、これは聖剣でも何でも無い普通の剣だって言っているわ。切れ味が良いらしいけど」
「ノチア、竜の普通を鵜呑みにしては駄目よ? これが終わったらちゃんと鑑定して貰いましょうね」
何故か、アイラにさとす様に言われてしまった。
剣のことは分からないし、アイラがそう言うなら後で鑑定でもしてみよう。
そう思っていると、探索に出ていた冒険者が戻ってきた。
「場所がわかったぞ。巣はかなりの規模だった」
話を聞いた冒険者がこちらを向き膝を着いた。
「アイラ様、どうかご協力を! 騎士団の協力をお願いいたします」
騎士はあくまで私達の護衛として来ている。
騎士団長はアイラの決定をあえて待つように何も言わずにアイラに向き直った。
「冒険者の要請を受け入れます。この領にとっても大事。騎士団長、ピーピンバードの討伐を最優先で指揮をお願いします」
「はっ! ジョンとマキエラはアイラ様の護衛として残り街へと帰還を開始しろ! 後は私に続いて討伐に向かう。冒険者と連携をとるぞ! 急げ!」
素早く騎士たちが動く。
私もそれに続かなければならない。
「アイラ! 私も行くね!」
「心配だけど、竜からの依頼ですもの止めることは出来ませんわね。ノチアの天真爛漫な所は大好きですけれど、どうか無茶だけはしないでね」
アイラは自分が足手まといになるとわかっているのか、寂しそうに行った。
私は騎士の後を追って走り出すと、後ろを振り向いてアイラに言った。
「大丈夫。アイラの考えた必殺技で倒してみせるからねー」
目的地は結構離れているようで、全力疾走で森の中を駆け抜ける。
しばらくすると、近づいた様でそこからは音を立てないように慎重に進んでいく。
そこで騎士団長のオーリオに話しかけられた。
「ノチア様、失礼ですが少しお話をよろしいか? 修練場での動きは見ていますが、本番で合わせやすい様に実力を把握しておきたいのです」
「自領ではシンバ氏に剣を習っていました。魔法の方も宮廷魔術師クラスは使えると言われています。山での狩猟経験は少ないですが、足元の悪い状態での戦いも叩き込まれています」
「おお、シンバ殿ですか。彼の方の指導を受けておられるのなら安心です」
シンバさんを知っていたようで、他の騎士も『おお!』と感心の声を上げていた。
「来られましたか。それでは討伐作戦を説明いたします」
すでに到着していた冒険者が私達を迎え入れた。
作戦はすでに決まっていて、みんな位置に着いて合図を待っていると言う。
「ピーピンバードの一番厄介な点は魔力への感知能力と広い視野です。それをもって弱いものを襲い、強いものには逃げる、っと判断が非常に早いのです。最初からいると思って慎重に身を隠して探さないと出会うことすら難しい」
ここに来る途中に茂みの中をつねに移動していたのは、そういう意味があったようだ。
音はそこまで気にしていなかったので、耳はあまり良くないようだ。
「そこで、逆にその索敵能力を利用したいと思います。まず冒険者たちにあえて複数の離れた所から空に弱い魔法を放ってもらい挑発を繰り返してもらいます」
「所詮は魔物、怒れば判断力を失うということですな」
オーリオ騎士団長が作戦の意味を理解して頷いた。
「はい、そしてピーピンバードが飛び出してイライラした所で巣の中に複数の冒険者に入ってもらい、卵泥棒と勘違いして一斉に降りてきたところに、一気に畳み掛けます」
「はい! 私も卵泥棒したいです!」
「ノチア様、危険です」
「いえ、良いかもしれません。ノチア様は小さくて囮役には打って付けですし、同じく囮役になるのはあの鉄壁のテスラもいます」
「混戦になれば危険なのは同じでしょ? それにここで前線に立たなかったらシンバさんに後で怒られてしまうわ」
「鉄壁のテスラですか⋯⋯本来なら私も同行したいのですが」
オーリオ騎士団長は巨漢だ。
鍛え上げられた筋肉と立場からくるオーラはなかなかのもので、人間が普段は魔力を帯びていないとは言え、囮役には向いていないのはあきらかだ。
「テスラ、頼めるか」
「いいっすよー。よろしくねノチアっち」
「よろよろー」
「おっ、いいっすねー。ノチアっち話せる人じゃん」
軽いノリで握手を求められたので私も思わず軽いノリで返してしまった。
テスラさんは、七歳の私よりは大きいけれど、かなり小柄な人だった。
ショートボブで動きやすい半ズボン姿。
二本の短剣がメインの武器なのか、身軽なその姿からとても鉄壁とは思えなかった。
「安心していいっすよー。ウチは護衛の任務はスペシャリストっすからー」
「よし、いよいよ始めるぞ。後方に合図を送れ」
いよいよ作戦が開始される。
私はテスラさんや囮組の人たちと茂みに隠れながら巣への距離を詰めていっ
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