14 炎と向き合う
火入れを開始して、工房長の指示のもとに、ゆっくりと釜の中の温度を上げていく。
「ノチア、もう少し魔力の出力を上げられるかしら」
「うっ、うん」
アイラの指示で火力を上げるように魔力を注ぐ。
サポートがあるとはいえ、失敗が許されない状態での魔法の行使が、こんなにも神経をすり減らすとは思わなかった。
一時間もしない内に汗が吹き出す。
ロッテアさんが汗を拭ってくれた。
三時間が経った頃に、ミアがコップに入った水を差し出してくれた。
少しだけ口に含むと、それだけでボーっとし始めていた意識がスッキリした。
大丈夫、まだ頑張れる。
八時間が経とうとした時、ついに最高温度に到達して、火入れが終わる。
後は自然に少しずつ温度を下げていくだけだ。
「終わりましたのね」
「なんとか成功したようですわね」
後ろから安堵の声が聞こえる。
声に疲れは感じるが問題は無さそうだ。
しかし、私には振り返る余裕は無かった。
魔力消費で頭が熱を帯びているのに、指先がやけに冷たい。
「お嬢様、こちらに」
「まあ、大変! ノチアちゃん大丈夫?」
ロッテアさんに手を引かれ立ち上がると、メリナさんによって私はすぐに停めてあった馬車の中に入れられて、横に寝かされた。
向かいにアイラも寝かされてサリアさんに面倒を見てもらっていた。
おデコに乗せられたメリナさんの手が冷たくて気持ちいい。
「私は大丈夫だから、メリナさんも休んで」
「駄目よ。あなた達が寝るまでは私達が見ているわ」
このままではメリナさん達が休めない。
観念して目を閉じると、疲れからか私はすぐに意識を失ってしまった。
目が覚めた後は、そのまま馬車で領主の館に帰ってすぐにお風呂に入る。
魔力の消費で汗を一杯かいた私は体を洗いたかったが、疲れがまだ取れていないので上手くいかず、結局サリアさんとメリナさんに洗われて着替えまでしてもらった。
その後、泥のようにベットで眠りについた私は、次の日には完全復活していた。
「さすが〝魔導王〟の加護ね。もう魔力は戻ってるみたい。これなら陶器がちゃんと完成したか見に行けるね」
「駄目よノチア。あれだけ魔力を使ったんですもの、今日は絶対安静よ。それにまだ冷却は終わっていないんじゃないかしら?」
「そうなんだー」
失敗していないか不安だったが、見れないのでは行っても仕方がない。
私はそのままソファーに腰を下ろす。
すると、まだ疲れは残っていたようで体が重く感じた。
「ノチアは素焼きが終わった後の作業を見学するのかしら?」
「うーん。取られたっていう魔石を探したいかな。私の領って調べてもらったのだけれど、鳥系の動物や魔物があまりいないみたいなの。だから、少し魔石を取ったという鳥も見てみたいし」
私の提案にアイラが難色を示す。
「山の探索なんて危ないわ。疲れだって取れてないでしょう?」
「大丈夫。私のは〝剣聖〟の加護もあるから体力も戻るの早いのよ」
「まあ、〝剣聖〟に〝魔導王〟なんて、まるでノチアは英雄になるわね」
「違うわよ。私がなるのはラーメン職人」
「ふふふっ。またラーメン? ノチアらしいわね」
そう言ってソファーの上で二人で笑った。
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