13 器のためならなんのその
執事さんに案内されて執務室に入った私達は魔導釜の魔石の話と私が魔力で動かしたい旨を伝えた。
「話はわかった。まずは座りなさい」
話を聞いたシュリン様がソファーに座わるように促した。
私とアイラが並んで座ると、向かいにシュリン様が腰を下ろす。
「ノチア嬢の提案はありがたく思うが、許可は出来ない」
「⋯⋯どうしても、駄目なのでしょうか?」
「ノチア嬢はまだ幼い、魔力の連続使用が体に良くないというのはわかっているだろう? それに、魔力だけがあれば良いという問題では無いのだよ」
シュリン様がソファーに背を預けて天井を見てから、姿勢を正して話し出す。
「魔力持ちならば我が領にも数人はいる。しかし、工業用の魔道具はそもそも人が魔石の代わりになるようには作られていない。正確には非人道的な観点から使えないように作られていると言うべきか」
「命令のよって人が酷使されないようにですね」
「そうだ」
どれだけ私がやりたいと思った所で、その機能が無いのならば出来るわけがない。
どうしようもない現実に、部屋に沈黙が降りる。
そこにノックの音が響いた。
執事さんが対応して入室してきた人物をみて私は驚く。
「失礼します」
入ってきたのはサリアさんとメリナさん、そしてギースさんだった。
サリアさんとメリナさんが私のもとに来て頭を抱きしめて撫でる。
「ああノチアちゃん、なんてあなたは優しいの。その献身、聖女のようだわ」
「お父様、この尊い提案は跳ね除けるのでは無く、全力でサポートすることこそが伯爵家としての矜持に思います」
「しかし、下手に魔石に魔力は注げば火が暴走してまた陶器が割れてしまうぞ」
「魔力を注ぐ必要はありませんよ」
黙って伯爵とサリアさん達のやり取りを見ていたギースさんが口を開く。
「そもそも、ノチア嬢が炎の魔法で直接火入れをすれば良いのです。私が持っている炎の指輪をノチア嬢にはお貸しします」
「その指輪があっても火入れのような繊細な魔力制御は無理だろう。あの魔石は火加減も制御していのだぞ。ノチア嬢は職人ではない、釜の中の状況を見ることも出来ないのでは無理だ」
「そこは私達の加護の出番です。お父様」
頭を撫でていたサリアさんが言う。
「まずメリナの加護の〝調停者〟によって私達とノチアちゃんをリンクさせます。そして、繊細な調整はアイラの加護〝賢哲〟で行い、ノチアちゃんの負担は私の〝支援者〟で支えます」
「しかし⋯⋯いや⋯⋯そうだな。そこまでの意思を娘達に見せられて受け入れなくてどうするのだな。わかった、こちらも最大限ノチア嬢をサポートしよう」
——伯爵の計らいで場が整えられた。
魔導釜の前に座り心地の良い椅子と毛布が準備される。
ミアさんも側に控えている。
念のために陶器を入れる前に魔法を使ってみることになった。
アイラのサポートのお陰か、驚くほどスムーズに魔法を扱えた。
火力も温度を変化させるのもこれなら問題なさそうだ。
そして、陶器が釜の中に入れられて、ついに火入れがスタートする。
ここからは休むことは出来ない。
私は覚悟を決めて魔法を行使した。
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