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凄い加護を貰いましたが、私の夢はラーメンですよ女神様!  作者: 千両
二章 器を求めて

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12 工房で起きていたこと

 工房に着くと、案の定なにか揉めているようだった。


「ダグ! お前が管理してなかったのが原因だぞ」

「そんなー。先輩が泥の撹拌と濾しをしておけって言ったんじゃないだすか。オラは真面目に作業をしていただけだす」

「言い訳するな。お前のせいなんだよ。そう認めろよ!」


 三人が一人に詰め寄っていた怒鳴り散らしていた。

 詰め寄られている方は、八歳くらいだろうか。

 明らかに他の三人より背が低かった。 


「何をやっているの!」

「なんだっ⋯⋯あっ、いえ」


 思わず叫んだ私に、男が振り返って凄む。

 一緒に来ている護衛が私の前に入り、一瞬だが殺気を出す。

 護衛の騎士と後ろにいるドレス姿の私とアイラを見て、すぐに貴族だと気づいたのか、その男は青い顔をして立ち尽くす。

 そこに、アイラがスッと前に出て男たちに言った。


「グスタフを呼びなさい。見学の先触れは出していますわよ」

「はっ、はい、ただいまお呼びします!」


 アイラの命令口調の言葉に三人は逃げるように中に走っていった。

 私は所在なさ気な少年に近づいて慰めの言葉をかける。


「怖かったでしょう? あなたのような子供に罪を押し付けようなんて、なんて恥知らずなのかしら」

「わわ、お貴族様。オラはええとその⋯⋯」

「名前は?」

「ダグっていいます」

「親方にはちゃんと訴えないと駄目よ?」

「田舎モンのオラが気に入らないのか、親方はオラの話なんて信じてくれないんだす。殆ど指導もしてくれねぇし、せっかく村の皆が腕を見込んでて送り出してくれたのに皆に申し訳ないだす」


 ダグは目を高速で泳がせてながらも、気持ちを話してくれた。

 私はまだ生まれていない弟を思い出して、少年の頭を撫でるがよく考えたら私のほうが年下だった。


「ノチアは優しいのね。そういうところも好きでしてよ」 


 アイラが少年を撫でる私を撫で始めた。

 そうしていると、すぐに年配の男性がこちらに走って土下座をした。


「これはアイラ様、申し訳ありません。トラブルの対応に追われて、お二方をお待たせてしまったこと、どうかお許しください」

「いいわ。それで? なにがあったのか説明してくださるのかしら?」


 グスタフの説明によると、釜の火を管理していた一番大きな魔石がテンプ鳥に取られてしまったのだと言う。

 本来閉めていなければならない、魔石の入っていた場所の扉を開けっ放しにしていたのが原因だと言う。

 しかも、その時に釜の中には注文が入っていた大量の陶器があったのだ。

 急な温度変化によって、その殆どのが割れてしまったのだと言う。


「急ぎの注文だったのです。なんとか火入れの準備までは出来たのですが、魔石がなければ火力が出ません。ああ、このままでは全員が責任を取って奴隷になるか首をくくるか⋯⋯」

「奴隷⋯⋯」


 領地に居た時には耳にしなかった言葉に絶句してしまう。

 アイラがそんな私を気遣ってか頭を抱き寄せてくれた。


「大丈夫でしてよ。奴隷なんて殆ど廃れた文化。少なくとも私の領地ではそんなこといたしませんわ」


 その言葉にホッと息が漏れる。

 貴族という特権階級に自分がいる事実を、ダイア領に来てから私はひしひしと感じていたが、奴隷の存在なんて考えたこともなかったのだ。


「しかし、奴隷にされるなんて誤解があったせいで問題が私達に上がってこないは問題かしら、この取引は領地としても大口だもの、信用問題になりますわね」


 陶芸はダイア領の銘品だ。

 急ぎの仕事を受けておきながら間に合わなかったのでは、確かに信用を失ってしまう。

 その言葉を聞いて青い顔をしているグスタフに私は質問した。


「火力があれば陶器は作れるの? 納期までに間に合う?」

「あっ、はい。三日以内に『素焼き』を終わらせることが出来れば、魔石が届いてからすぐに『本焼き』入れるので、間に合うと思います」

「案内して!」


 釜の方に行こうとする私をアイラが止める。


「何を考えてるのノチア。私達に出来ることなんてありませんわよ」

「私が魔法を注いで釜を動かすわ。魔力を出すのも得意なのよ」

「無茶だわ。半日以上魔力を出し続けなきゃいけませんのよ。ノチアに出来るわけがありませんわ」

「大丈夫。私には〝魔導王〟の加護があるもの。領地では長時間出す魔法の訓練もしていたのよ」


 私が強い意思を込めてアイラを見る。

 アイラは少し視線を彷徨わせた後、静かに言った。


「わかりましたわ。でも今すぐには駄目でしてよ。ちゃんとお父様に相談して許可をいただいてからです。ノチアはうちの領に来ている客人なのですからね」

「うん、ありがとう。でもね、客人なんて言わないで、アイラと私はもう友達でしょ」

「——ッ。ノチア」


 感極まったようにアイラが私を強く抱きしめらる。

 でも、少し申し訳ない。

 アイラを助けたいのは本当だけど、私には打算もあるのだ。

 ここで助けておけば職人の貸し出しの許可が降り安くなる。

 技術を持った職人は財産だ。

 そう簡単に貸し出してはくれないだろう。


 それに、この経験はスープ作りにも絶対に生きる。

 丼もそうだが、ラーメンに関わるものは何でも自領で作りたい。

 我ながらなんて我儘だろう。


「頑張って説得いたしましょう!」

「そうね。アイラ」


 私達はシュリン伯爵を説得するために館に戻った。

読んでいただきありがとうございます。

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