110 ある種のすくみ
※この話を書く上で、109話の内容を少し変更しました。読み直していただければ混乱が無いと思います。作者が未熟なために、ご迷惑をおかけして申し訳ありません。
変更日 2026/9/27
「ゴウオウ、私はシアに協力したいと思うの」
「……ノチアがそう思ったのなら仕方ないじゃんよ」
「それでは我が領に……」
「お待ちなさいお姉さま!」
私が意思を決めてシアに協力を申し出ようとすると、それを止める様に声が響く。
声の方には従者を連れた二人の女性がおり、こちらに向かって歩いて来ている。
二人共、シアと同じエメラルドの髪とシアによく似た顔だちをしている。
「ノチア様、姉の意思がドーリッシュの総意ではないのです。どうか、決断は少しお待ちください」
「……ディア。それにフランも来たのね」
シアの表情は焦ったものでは無かったが、気まずさを帯びている気がした。
「まずはご挨拶をさせてください。私はドーリッシュ領シュトルム公爵が二女、ドールディアと申します。どうぞディアとお呼びください。その方が馴染みがありますわ」
「同じく、三女のフランドール。フランでいい。よろしく」
「私もノチアって気軽に呼んでくれるとうれしいな。ディアにフランね。よろしく」
挨拶した二人は、顔だちも体形もシアと凄くにている。
ディアは髪をきっちり結いあげていて目は少し釣り目ぎみ。
フランは髪を真ん中で左右に流していて、オデコと眠そうな瞳が特徴的で、それの所為か幼い印象を受ける。
ディアは挨拶が終わると主張を述べてきた。
「我が領から竜の巫女が出ていない言う話は、姉からもう聞いていると思います。しかし、それもまた竜の意思なのです。ノチア様のお手を煩わせてまで、竜の意思を確認するなど、していい事ではありません」
「他の竜の所にいって話を聞けなんて、ノチアにもゴウオウにも失礼! お姉さまのバカたん!」
「バカたん?! 私は、なんとか今の状況を変えようと思って!」
私の目の前で三姉妹がケンカを始めた。
これがシアが初めに言っていた「考え方に齟齬」と言う事なのだろうか。
姉妹で言い争う中、フランが抜け出して私の所に来た。
「ノチアはどういういきさつでゴウオウ様と契約を? 私は巫女になりたい。ドーリッシュ領の竜の巫女はドーリッシュ領の人間が務めるべき!」
「私とゴウオウの出会いは、ゴウオウからお願いされた事かな?」
私は森でピーピンバードの討伐を頼まれた話をする。
「竜からのお願いを聞く……それは重要そう」
「そもそも話しかけてくださらないから困っているのですフラン」
「声をかけたくないと思っていらっしゃるのです。もう竜の善意に甘えるのではなく、我々から竜を開放してさしあげるべきなんです!」
「勝手な判断です。それこそ竜の真意を聞いてからでしょう。まだ私たちは竜に受けた恩を返し切れてはいないのです」
「それが押しつけだというんです」
また三人がもめ始めた。
その後も続いた三人の主張を整理すると、シアは竜に奉仕をする為には、とにかく話をするべきと主張し、対するフランは、意見を聞く事こそ自領の人間がするべきという。
ディアは語り掛けてこない事こそが、自分たちの存在を疎ましく思っている事の証左だと言い張る。
根本は、全員が竜を大事に思って行動したいのに、何年も言葉を貰えない事で起きている問題だと言える。
「それならやっぱり竜に直接聞くのが一番よね?」
「ですよね! ではノチア、竜の所に行きましょう!」
「意見を聞くのは我が領の巫女の務め!」
「だから、竜は巫女はいらないと態度で主張しているといってるんです!」
三人の会話がループしてしまった。
シアだけの意見を聞いて私が勝手に他領の事に首を突っ込むわけにはいかない。
揉める三人の前で私は途方に暮れるしかなかったが、傍らにいたゴウオウが私に話しかけてくる。
「ノチア、さっきから竜の視線を感じるじゃん!」
「えっ? まさかドーリッシュの竜がこの近くに来ているの?」
私は周囲に視線を走らせる。
しかし、竜が潜んでいるような気配は感じなかった。
「どこ? いるようには思えないけど?」
「人の肉眼では見えないくらい離れているじゃん」
「気づかれたくはないって事かな?」
わざわざラウメまで来ているのなら、ディアの言う様にドーリッシュの人達を見限ったわけでは無いだろう。
その事だけでも伝えれば自体は動くかもしれない。
(どうしよう? 伝えるべきだよね)
『やめよ! 竜に寄り添いし娘。主様は見極めておるのだ!』
対応を考えていると何者かに頭の中で話しかけられた。




