107 シルテーリア様の予告
私は隣に座ったシルテーリア様を真っすぐに見据える。
シルテーリア様はエメラルドグリーンの瞳で私を見返してきた。
その瞳の中には悪意は一切浮かんでいない。
だた純粋に見つめ返してきているだけの瞳に私は疑問をぶつけた。
「袋に細工をしてあるって事は、私に何かをしようとしているのですか?」
「嫌だわぁ~、ノチアちゃんを害そうなんてする訳ないじゃない? むしろその逆よぉ~、ノチアちゃんを守るための措置ね」
「この臭さがノチアを守るためなんて嘘じゃん! この匂いでノチアの気配を探れないじゃん! ワシがノチアを守れないのが一番危険じゃんよ!」
「そうなのよぉ~。匂いが重要なのよ~。良くわかってるじゃないのぉ~」
「匂いが? 私には感じられませんが……」
私が改めて袋の匂いを嗅いでみるが、何も感じない。
その匂いは竜の様に感覚が鋭いものしか感じない者なのだろうか?
それならば、その匂いは何のためなのだろうか?
「ノチアちゃん。もうすぐ十四歳でしょ~? 最近~、体に変化はなかったかしらぁ~?」
「体に変化ですか? 特には……えっ! ……それって」
「それそれ! その成長は契約している竜にはぁ~、ちょ~っと刺激が強いのよねぇ~。だからぁ~、体が馴染むまではぁ~、その袋は持ってなきゃダメよ~」
「……本当?」
思わずゴウオウを見てしまった。
なんだかすごく微妙な気持ちだ。
「えっと、どれくらい持ってれば?」
「二回目くらいまでは持っておいて欲しいわね~。それと~、それとは別で、袋は持っておいてね。ちょっと騒いでる領地がいるのよ。もしかしたら、ノチアちゃんの所に来るかもね」
「来る? 誰か尋ねてくるのですか? あまり良い訪問ではなさそうなのですが」
持たせられた紋章の刺繍の入った袋の話しをしていたはずが、余計な情報まで聞いてしまった。
王都では貴族の位を笠に着て、横柄に振舞う者も見てきた。
私はそんな人間が領地に来られて好き勝手に命令するのではないかと顔をしかめる。
「ノチアちゃんは活躍しすぎちゃったのよ~。ノチアちゃんを題材にした歌や本は王都でも人気だし、すっかり広がっちゃっているの~。そうすると、自然とノチアちゃんが竜に乗ってるって事に気が付く領地も出てきてね~」
シルテーリア様の言いようは、その貴族に心当たりがあるように思えた。
聞きたくないが、あらかじめ知っておた方がいいきがする。
「……上位貴族が来るって事ですか?」
「一番可能性があるのは公爵家なのよねぇ~」
「それってシルテーリア様としては身内に近いですよね。止められないのですか?」
私の質問に珍しくシルテーリア様の端正な眉が下がる。
「私ではちょっと止められないかな~」
「……ルキラにお願いしてドールにいさせてもらおうかなー」
シルテーリア様の発言を聞いて、顔を手で覆った。
子爵の父様より発言力の強い、ルキラの父であるサーフ伯爵に保護をお願いしようかと本当に考えた。
「とにかく~、しばらくはその袋は肌身離さずに持っておいてねぇ~。じゃあ、私は行くわぁ~」
シルテーリア様の足元から土煙が上がったと思うと、そこにはもうシルテーリア様はいなかった。
「ごうおう、シルテーリア様ってやっぱり……」
「竜じゃん? 人化して王家に溶け込んでるじゃんよ」
「女王陛下が契約してるのかな?」
「さぁ? 興味ないじゃん」
王国とゴウオウとの捺印式では、かなりゴウオウに有利な内容だった。
あの時は、そのことが少し不自然に感じたが、王家自体が竜と密接にかかわっているなら納得できる。
「とりあえず父様に報告しておかなきゃ。ああー、本当に来るのかなー。嫌だなー」
「考えたって仕方ないじゃん」
誕生日も近づいてきているのに、喜べる気分の私にゴウオウがすり寄ってくる。
私はゴウオウの頭を抱きしめて、頭を振って気分を切り替えるように努めた。
名前を変更しました。
シュテーリア → シルテーリア ……です。
なろうの作品の中でも超人気作品の作中に出てくる神様の名前を連想してしまいますよね。
最初に名前を付けた時に「微妙に違うので大丈夫かな?」と思ったのですが、作者が耐えられませんでした。




