腑に落ちない何か1
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これが先の公爵閣下……。
次の日城内をマッキノンに案内してもらっていたら肖像画が大量に掛けてある場所があった。
歴代キングスフォード公爵たちだ。
先の公爵は黒髪にアメジストの瞳の細面の人だ。
先日亡くなったという公爵。
ウィルバートのお父様?よね。
そしてこちらがウィルバートのお母様。
そっくりだわ。
これぞ母子。
ウィルバートのあの顔面国宝並の顔は母ゆずりだったということがわかった。
輝かんばかりの金髪も、碧く美しい瞳も。
華やかな中にある落ち着きと気品も。
さらにその横には先の先の公爵閣下と夫人であろう人物の肖像画もあった。
誰を見ても顔面国宝にしか見えない。
すごい一家だわ。
その日は城内を全部見て回った。
図書館、子どもたちの部屋から使用人の部屋が並んでいる地下、そして厨房、ウィルバートの部屋まで。
双子たちの部屋には家庭教師が来ているようで、扉が少し開いている間から、厳しい叱咤の声が聞こえてくる。
止めに入りたいのをぐっと堪える。
ウィルバートの許可を得ずにでしゃばるわけにはいかない。
今日の夜帰ってくるはずだからちゃんと話をしないと。
全てはそれからだ。
概ね使用人たちは礼儀正しくハンナに接した。
すれ違う時は必ず立ち止まり礼をとったし、話を聞くと丁寧な口調で答える。
だが、何か違和感がある。
それはここに来てからずっと感じていることだ。
何か隠されているように感じるのだ。
わからない。
夕方になって部屋に戻り、どさりとベッドに身を投げた。
「お嬢様。お疲れでは?お茶をお淹れしましょうか?」
一緒に見て回ったニアも疲れているだろうに、厨房からおやつのクッキーをもらって来てくれて、お茶を淹れてくれた。
「ありがとう」
バターたっぷりのおいしいクッキーを食べながら違和感について考える。
「ねぇ。この家の使用人たちってあなたたちに対する態度はどうなの?」
侍女のニアと護衛騎士のリードに聞いてみた。
「そうですね。僕は暖かく迎え入れてもらったと思ってますよ」
リードは昨日見た兵士たちと同部屋だ。
あの兵士たちには違和感は感じなかった。
だからだろう。
でもニアは?
「わたしの同部屋は厨房担当の侍女たちなんですけど、その人たちは友好的ですよ。厨房のまかないの残りを持ってきてくれたりとか……。恋バナもしてますね」
「恋バナ?」
「ええ。どうやら兵士のひとりに恋してる女の子がいるみたいで、毎日キャッキャとその話でもちきりです」
「へぇ……」
まぁ兵士はモテるものだ。
侍女が恋してもおかしくはないだろう。
「ただ、何となく思うのですが、厨房の侍女たちと城の中を取り仕切る侍女たちの間に壁があるような気がするのです」
「それはどういう?」
「厨房の侍女たちに聞いてみるとまだこの屋敷に来て数か月の者ばかりで、おそらくですがウィルバート公爵閣下が戻られた時に厨房を総入れ替えされているのではないかと。誰かから聞いたわけではないのでわたしの予測ですが……」
「その予測が当たっているとすれば厨房で何か不手際があったということね」
「そうなるかと思います」
夕食までの間にまとめておこうとハンナは部屋の隅にあった古びた机に座って筆をとる。
この部屋に入ったときに部屋の角に使わないようにくっつけてあったものを中央の方へ運んで使えるようにしてもらったものだ。
ビアンカは筆をとることは嫌いだった。
だから、使っていなかったのだろうが、ハンナは書き物ができないと生活に困る。
まず毎日日記をつけているし、何かにつけて書き留めておくタイプだからだ。
古びてはいるが机があって助かった。
実家から持ってきたキャリーバッグの中をひっくり返してメモ用紙の端くれを取り出した。
日記帳をどこかで仕入れなければと思いながら机の前に座る。
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