エピローグ3
「申し込んだら踊ってくれるか?」
泣きそうになって口に手をあてた。
「俺じゃダメか?ずっと君のダンスを見てたんだがな」
ぽろぽろぽろと涙があふれてきた。
ずっと聞きたかった声。
「そうだ。じゃぁ一口食べてから踊るか?どれがいい?」
そう言うとその男性はハンナの横にひょいっと並び、そして、お皿をとった。
「どれにする?君が選べよ」
泣いているハンナの両肩を持つとその男性は自分の方へ体を向けさせる。
ああ……。
「ハンナ……」
「ウィルバート様……」
その姿は全然記憶と変わっていなかった。
若干若くはあるけれど、それでもその美貌はそのままで、色気もすべてそのままで。
「会いたかった」
「え?」
その言葉に驚く。
「俺が忘れたと思っていたか?」
「覚えているんですか?」
「忘れるはずないだろう?好きな女を……」
「本当に?」
そんなことがあるだろうか?
クロノスの加護者であったハンナが覚えていたのはいいとしてウィルバートが全てを覚えているなんて……。
奇跡なのかも知れない。
「ああ。むしろ君が忘れているんじゃないかと疑っていたくらいだよ。全然会いに来ないからな」
「わたしは……」
「わかってるよ。君のことだから、どうせわたしよりふさわしい女性がいるからでしゃばるわけにはいかないとか思っていたんだろう?」
「そ、それは……」
バレている。
「そんなこと百も承知だ。今日までどれだけ待ったか……」
そんなウィルバートは前世と同じ近衛騎士団長となっている。
以前の人生と変わったのは、彼に妹や弟が三人いることくらいか……。
「さぁ行こうか。踊るぞ」
「せっかくだから食べてからにしませんか?」
チョコレートを探したいのも本音だ。
「は?相変わらずの食いしん坊だな」
「おいしいものは食べないと」
「ダメだ。後でだ」
そう言うと強引にウィルバートはハンナをひっぱって連れて行く。
「ハンナが俺のものだということをここで他の者に示しておかないとな」
「え?」
もうひとつ変わったことがある。
ウィルバートに遊び人のうわさが何もないところだ。
今世では、ウィルバートは堅物で通っているのだ。
「君は自分がビアンカ嬢の影に隠れて目立たないと思っているかもしれないが……」
「目立たないですよ」




