エピローグ4
「そんなこともないんだよ」
うそばっかり。
自分はどれだけ今でも令嬢たちの視線が集中してると思っているのよ
「さぁ踊るぞ」
ちょうど曲がはじまったところだったので、ウィルバートはホールの中央にハンナを連れて行く。
そしてハンナの手を取るとダンスが始まった。
「なかなかうまいな」
「運動神経はいいのですよ」
「ならこれくらいできるな」
そう言って意地悪げな笑みを浮かべるとハンナをくるくると回転させた。
「ちょっと!」
「君ならできるだろう?運動神経いいんだろう」
まあ、くるくると回されても対応できる。というかむしろ楽しい。
「楽しくなってきました」
「だろう?じゃあ最後は決めるぞ。いいな。回って俺に身をまかせろ」
「はい。やってみます」
くるりんと回転した。
そしてそのまま身をまかせていたら、ストンとウィルバートの腕の中に落ちた。
パチパチパチパチ
拍手が起きている。
「すごいな。まるでアクロバットだ」
「あれは、キングスフォード近衛隊長ではないか。珍しく令嬢と一緒だぞ」
「どういうことだ?バーディナ家の次女のほうだ」
「姉は無理だから俺は妹の方に申し込もうと思ってたのに……」
「姉は華やかだが、妹は落ち着いているほうのかわいさがあるんだぞ」
「ほらみろ。君は人気がある」
ハンナには姉の保険くらいの発言にしか思えなかった。
だが、まあいい。
嫉妬してくれているのだから。
「ウィルバート様。どうして?」
「あんな地味な女お似合いにならないわ」
ほら、あなたの方がモテるのに。
嫉妬している自分もそこにいる。
要はふたりとも……。
「てことで、もう一曲行こう」
「え?婚約者では……」
二曲連続で踊るのは婚約した者か既婚者と決まっている。
「婚約しているじゃないか?」
「は?」
そんなことを言い合っているうちに二曲目がはじまった。
が、放してくれなかったので仕方なくそのまま踊り続ける。
「前世で」
「いや、婚約した覚えは……」
「愛を誓い合ったぞ」
「誓い合っては……」
そしたらにやりと笑ってウィルバートが言ったのだ。
「『ウィルバート様。愛してます』」
「なっ!」
「意識なくなってるって思っていたか?」
「いや、えっと……」
最期かもしれないと思ったから事実を告げようと……思ったのかもしれない。
「それはですね……」
「愛し合っているんだ。結婚以外にあるまい?今世は俺はきれいな体だぞ」
「そ……」
ああ。そうよ。もう認める。
わたしはあなたを好きで、生まれたときからずっと覚えていて、ずっとあなたにいつ会えるかと待っていて、もしかしたら今日かもしれないと思っていて、あなたが見向きもしなかったらどうしようと怖くて、今日この日を迎えたのよ。
だからあなたの声を背後で聞いた時、泣かずにおれなかったのよ。
今あなたが目の前にいることが信じられないのよ。
そうよ。そうなの。
あなたのことが……。
曲はクライマックスにさしかかっている。
最後にウィルバートはハンナを大きくぐるんとまわした。
ハンナはとてもきれいに回転するとウィルバートの胸の中におさまった。
「ハンナ。愛してる」
「わたしも愛してます……」
ハンナが覚悟を決めたようにその言葉をつぶやくと、ウィルバートはにっこりと笑って、絶妙に素早い動きで彼の色気たっぷりの唇でハンナの唇をふさいでいた。
そのキスはとても長く深く、そして美しかった。
ふたりの長い長いキスは、今までのふたりの人生そのもの。
ずっと待ち続けたふたりの愛の証に他ならない。
人生をかけて悪を成敗したふたりはやっとこれから一緒になって人生を紡いでいくのだ。
その二人をとある妙齢のカップルが暖かく見守っていた。女性の方はウィルバートとそっくりの顔立ちである。
「あー……えっと、ハンナはもう見つけちゃったみたい」
そのとなりで踊っていたビアンカは目の前の男にメロメロになってしまった。
今まで誰とも婚約しなくてよかった……。
「君も見つけたんじゃないの?ビアンカ嬢?」
「え?」
「どうだい?僕たちも二曲目踊る?」
「ジェイデン様!」
明日からの社交界は二組のカップルの話題でもちきりになりそうである。
~fin~
読んでいただいたたくさんの皆様に感謝いたします。
長らくお付き合いくださりありがとうございました。
実はこのお話、続き書きたいなと思っております。
今のままじゃ双子が報われないので…
いつになるかわかりませんけど、お届けできる日が来ればなと思っております。
最後に、⭐︎、いいね、感想などいただけたらとても嬉しいです。




