エピローグ2
「わたしでいいのだな?」
踊る直前になっても確認する父に苦笑しつつハンナはにっこりと笑った。
「お父様と踊りたいのよ。さぁ踊りましょう」
となりで踊るビアンカには早速令息たちの視線が集中している。
ビアンカは美しく、領地にいてもいつも令息が群れをなしていたが、その誰にもなびくことなく今日を迎えた。
「あの令嬢美しいな。誰だ?」
そんな声が聞こえてくる。
一方ハンナは……。
目立たず、父親と楽しくダンスしていた。
なかなかにダンスは楽しいものだ。
もともと運動神経はいいのだ。
ダンス自体は好きだ。
ただ、踊る相手がいないだけだ。
と、曲が終わると、ビアンカのまわりには予想通り令息の列ができている。
ビアンカは仕方ないわねという顔をしながら小さくため息をはき、ハンナを見た。
「踊るしかないわよ」
「そうね」
ビアンカは仕方ないという風に列の一番前にいた令息とダンスを踊り始める。
ビアンカも運動神経はいい。
だから、ダンスがとてもきれいだ。
ハンナはビアンカを見守りながら、ダンスの輪から離れた。
ゆっくりとホールのはずれに用意されている食事の方へと歩を進めて行く。
きっと王城の食事はおいしいに違いない。
ビュッフェ形式になっているから自由に食べられるのだ。
もしかしたらチョコレートなるものもあるかも知れないわ。
あっちで食べようっと。
そう思って、ビュッフェテーブルに近づいたのだが……。
「食いしん坊だな。君は」
「え?」
「デビュタントくらいダンスしないのか?」
声を聴いてすぐにハンナの心臓がドクンと鳴った。
背中にその男性の声を感じながら、振り向きたい衝動を抑える。




