怒涛の捕縛劇
「皆さま。エイダン・フィリーズです。この度クリスティアナ公女と婚約することになりました。ここに使節団として派遣されたこと、彼女と出会えたこと、うれしく思っています。運命だったのではないかと……。一生大切にします。どうかお見守りください」
エイダンのまじめな演説には盛大な拍手が送られた。
「クリスティアナです。精一杯公爵夫人を務めますわ」
ふたりはお互い見つめ合いまた笑顔を交わした。
そこにはお互いの愛が感じられる。
パチパチパチと拍手が起きている。
そんな幸せな雰囲気の中ハンナは焦りはじめていた。
バイロンが見当たらない。ホール中に目を走らせても……。
どこに行ったの?
「この喜ばしい報告とともに今回非常に悲しむべき事態が発覚した」
先の先の公爵が話を続ける。
「この中に我がキングスフォードを裏切った者がいる」
「え?誰だ?」
「もしや?」
分家の者たちは基本的に本家には忠実だ。自分達が守ってもらっているから。
がやがやと皆のざわめきが落ち着くのを待って、先の先の公爵は厳粛に話を続けた。
「わたしは五年前、乗馬時に事故に遭った。妻はそのせいで車いす生活となり、わたしも足が不自由になった。その時助けてくれた下働きの青年をわたしは重用してきた。だがそれが間違いだったのだ」
先の先の公爵が言葉を切るのを待ってまた会場ががやがやに包まれる。
「え?あの事故で何かあったのか?」
「閣下を助けたのは確か、フランチェスコという青年では?」
「今も働いておるぞ」
また公爵が続ける。
「あの事故は計画されたものだった。これがその時馬にのませた興奮剤の購入記録だ。これを購入したのはフランチェスコ、助けてくれた張本人だったのだ」
「なんですと!」
「あの、今は執務代行をしているじゃないか?その男が?」
「どういうことだ!」
口々に人々が言う中、先の先の公爵の厳格な声が響く。
「フランチェスコを捕らえよ!」
「「「はっ」」」
実はフランチェスコの周りにはすでに包囲網が張られていた。招待客に扮したエイダンの部下たちが密かに取り囲んでいたのだ。
「なっ!なぜ僕が!」
「そして、これはウナズナリの根の毒だ。わたしたちに服用させようとしていたようだ。この毒と一緒に手紙が入っていた」
「な、なんですと!」
「とんでもない輩だ。息の根を止めろ!」
口々に叫ぶ分家の者たち。
フランチェスコは焦りふためいている。そんな中兵士たちはフランチェスコを取り囲み、瞬く間に拘束した。
「この手紙を書いたのはフランチェスコの父バイロン。今日会場に彼も呼んである。探せ!」
断罪が続く中、ハンナは焦っていた。




