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パーティ開始

「エイダン公子様。ありがとうございました」


「我が国とプレストンの友好のために尽力してくださったとか」


「昔から両国では歴史が深い間柄です。今回友好が深められたのはあなたがいらっしゃったからですね」


次の日『エイダン公子様を送る会』が公爵城の中央ホールで行われている。

ささやかだという割にはさすが公爵家だけあって分家にあたる伯爵家が何家もパーティに参加していた。


十代から二十代の男女が入り混じりエイダンを取り囲んでいる。


何分、隣国のきりりとしたイケメン剣士である。

目ざとい女性たちがほうっておくわけが無い。


そんな中クリスティアナは少し口をとがらせながらも父親と母親の横に落ち着いていた。


「ひどいと思わない?」


となりには侍女に扮したハンナがいる。


「ダメですよ。にっこり笑って」


「だって……」


それでも見たくないらしく、そっぽを向いてしまった。


「大丈夫ですよ。もうすぐ発表でしょう?」


「そ、そうね。落ち着くわ」


昨日朝まで打合せをしたあと、朝になるとすぐにエイダンは一緒に来ていた腹心の部下を使ってプレストン王国にある実家に早馬を送った。

返事は先ほど届いたところだ。

キングスフォード公爵家の立地がプレストンの王都にも近くてよかったとその時ほど思ったことはない。


ハンナはクリスティアナの横で目立たぬよう控えながら会場中に目を走らせていた。

会場一番奥の中央にフランチェスコは立っている。肖像画よりは幾分若いがまだ一介の使用人である彼は人当たりの良さそうな雰囲気を漂わせており静かにその場所でひとり佇んでいた。公爵家への思いはうまくその仮面の下に隠しているようだ。

グスタフとフィーネも会場内で目立たぬように使用人として働いている姿を確認済みだ。

そして会場の奥の左端で睨みをきかせている人相の悪い男がバイロンだ。彼は会場入りする前に先の先の公爵閣下へ挨拶に来ていた。

フランチェスコの叔父として。

笑顔で挨拶するその奥にゾッとするほどの怨恨を隠していることをハンナは感じ取った。それは思わず身震いするほどのものである。積年の恨みが膨れ上がっている。


「皆の者。今日は集まってくれてありがとう」


全員がそろったところで、先の先の公爵閣下がおもむろに口を開いた。


「今日は、エイダン・フィリーズ公子殿が国へ帰られる前にめでたい話があったのでパーティと称して皆に集まってもらったのだよ」


となりにいるクリスティアナが緊張したのがわかる。


「まぁ何の発表でしょう?」


「そうですね。何かキングスフォードに関する重要なことですか?」


エイダンのまわりにいた若者達が前に注目したと同時に、エイダンは静かにするするとその場を抜け出し、前にやってきて、そっとクリスティアナの横に立つ。


「わが娘、クリスティアナが婚約することになってな」


「まぁ!」


女性たちは歓喜の声をあげる。


「ついにお決めになりましたの?」


「もしや、王城へ」


クリスティアナには王太子妃の話も当然あった。

だが、今まで明確な返事をしなかったのだ。


「こちらのエイダン・フィリーズ公子殿だ」


「「「え?」」」


若者たちがいっせいに自分達の隣にいたはずのエイダンの場所を見たがもういない。

すでに移動していた彼はクリスティアナの横で微笑んでいる。


「プレストンの大使として我が家に滞在されていた彼が求婚してくれた。彼がキングスフォードをクリスティアナとともに盛り立ててくれることになったのだ」


「「「おおっ!」」」


本家に女の子しかいないので分家の者たちは今後どうなるのかと懸念していたらしく、年配の大人たちは歓喜の声を上げている。


「なんと、フィリーズ公爵家からですと?すばらしいではないですか?」


「本当だわ。これでキングスフォードの領土も安泰だ」


「プレストンとの橋渡しにもなりましょう」


「何よりだ」


わいわいがやがや皆が喜びの声をあげている中、クリスティアナとエイダンは見つめ合い笑顔をかわしあった。


そんな中ハンナは横で微笑みを浮かべながら、周りに気を散らし続けていた。

今までフランチェスコがいた場所を見ると、呆然としている。

計画が台無しなのだからそうなるだろう。

そのうち憤怒の形相に変化してきた。仮面が剥がれはじめている。


そして父親のバイロンがいたところを探す。

ずっといた端の方。


だが……。

いない。いないわ。

どこに消えたのかしら?

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