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証拠の品々

執務室に入ると、今もウィルバートが使っている重厚な執務机の上をウィルバートはトントンと叩き、固さを確認している。


「問題なさそうだ。ハンナ、君がいいと俺は思うがな」


そうか。この中では……そりゃわたしよね。


「わかりました」


一番体重が軽いのは間違いなくハンナだ。


皆が意味がわからないという顔でふたりを見つめる中、おもむろにウィルバートとハンナが執務机の上に乗り、肩車をしてもらうと天井のある一角をぱかっと開いた。先日ヤーコンからこの話を聞いた際に確認しておいた場所だ。絶妙にわかりにくくしてはあったが、簡単にその場所は開けるようになっていた。

中に頭を入れる。


「どうだ?ハンナ」


「待ってくださいね」


頭をぐるりと見回す。

と、あった。

書類の山だ。

結構な量がある。


ハンナはその書類の山を少しずつ取出し、ウィルバートの隣に待ち構えていたエイデンに渡していく。


「こんなところに隠し場所が……?しかも精巧に作ってあるではないか。いつの間に?なんと、こんなにあるとは」


ひそひそと小さな声で先の先の公爵閣下が驚きの声をあげている。

ロズウェル王国では使用人の個人部屋は時々不正がないかチェックが行われるような風習があるから灯台下暗しでここに隠したのだろう。


書類を全部取出し、天井裏は元通りに閉じる。そして執務室で確認するのは危険だと判断して、その書類を持って音を立てないように慎重に、もう一度主人の部屋まで五人で戻った。


そこで一息ついてから書類を全部チェックしていく。


徹夜である。


四の五の言っていられない。

うまくやらなければ皆のこれからの人生がかかっているのだから。


「この中に公爵閣下の乗馬当時の事故の記録があるはずなのです。購入した馬の興奮剤が。それと毒があるはず」


やつが残してくれていることを祈る。だけどまた使えるものを捨てはするまい。


「毒?」


「はい。公爵閣下と夫人はクリスティアナ様がウィルバート様を産んですぐに殺されますが、それがおそらく遅効性の毒によるもの。もしかしたらもう盛られている可能性も……」


「なんじゃと?」


「遅効性だからウナズナリの根ではないかとヤーコンは言っていたな」


「はい。おそらくその購入履歴が……」


皆で一枚ずつ探していたら、エイデンが重厚な封筒に入った手紙を一枚差し出した。


「これでは?」


『フラン。これを使え』


それは殴り書きのような下手くそな文字だった。


『ウナズナリだ。首尾よく公女を手ごめにできたらこっちのものだ。ガキが産まれればなおよい。そうすればお前は公爵。願いに願ったこの国を牛耳ることができる』


その封書の奥には白い粉が入っていた。


「まぁ!なんてこと」


クリスティアナはあまりの文面に手紙から顔を背けた。

エイダンが慌てて肩に手を回している。


「なんと、きちんと手紙まで残していてくれているとは……」


「まだ使っていないようだな」


「そうなのね。よかった」


クリスティアナがほっと胸をなでおろしている。


「許せぬ」


先の先の公爵閣下が憤怒の表情に変わっていく。

無理もない。信用していた者に裏切られたのだ。

しかも命の恩人と思っていた者が実は命を狙っていたということがわかった。


「孫よ。教えてくれ。フランチェスコが私たちを殺した後、公爵家の家系図を書き換え、陛下を亡き者にし、公爵として国を牛耳っていたのか」


聞きたくないけれど聞いておかねばならない。そういう葛藤の表情で先の先の公爵がウィルバートに視線を合わせた。


「いいえ。牛耳る前に死にました」


フランチェスコがウィルバートを最初は実子だと思っていたこと。ビアンカへの陵辱。双子のこと。そしてハンナのとの出会いを全て説明した。


「彼女がいなければここまでこれませんでした」


ウィルバートは横にいたハンナの肩を引き寄せると、先の先の公爵がハンナに視線を合わせた。


「ハンナ嬢よ。ありがとう。礼を言う。そなたのことは必ず覚えておく。そしてそなたのしてくれたことを無駄にはしない」


「ありがとうございます」


そして夫人へと視線を移すとお互いに頷き合い決意したように書類を手に取った。


「これでわたしたちを殺そうとしたことは明白。これを突き付けてやつらを成敗する」


「はい」


その後六人は入念に打合せを行った。


明日は運命の日になりそうである。

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