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「大丈夫だ。すべてはうまくいくと信じてくれ。詳しいことは話せば長くなりすぎて話している暇はない。時間がないんだ。俺とハンナが井戸に入ってすべてを片付ける」


「井戸に入ればそれが可能なのですね?」


「ああ」


「井戸について調べましたが、水が湧くようになったのはビアンカ夫人が出奔される数ヶ月前からで、その後枯れてしまって、数日前にまた湧き出したのだと厩舎の者が言っていました」


ヤーコンが井戸についても調べてくれたようだ。


「そうか……わかった」


やはりあの井戸はビアンカとハンナが加護を得ると同時に水を沸かせているのだ。確実にクロノスの神の仕業だ。


「お気をつけて。ウィルバート閣下」


ヤーコンはそれ以上は聞かず敬礼した。

主人が言うことは確かなのだ。

絶対的信頼を置いているから。

マッキノンもそれに続く。


「ハンナ様。お気をつけてください」


「ええ。大丈夫よ」


「ビアンカ様もきっと生きておられますよね?」


「ええ。きっとね」


ニアも納得した。


ダフネもしっかり頷いた。


この者たちと別れるのも忍びないし、過去が変わったらもう二度と会えないかもしれない。

けれどやらなければならない。


「「みんなありがとう」」


四人が納得し、その後、四人は執務室を出て双子のことであわてふためきふたりが馬で出て行ったと吹聴している間に、ウィルバートとハンナはウィルバートの部屋に移動して鍵を閉め入念に計画を練っていく。


「井戸に入るなんていうことをして本当に大丈夫なのかとは聞かない」


ウィルバートも加護持ちである。加護持ちは勉強もしていないし誰にも教えられてもいないのに、こういうことができるということを身体や頭で理解しているときがあるのだ。

ウィルバートは敵を目の前にしたとき、敵の動きが何もしていなくても読める。

五手先くらいまでわかるのだ。

それはアレスの加護ゆえんだと思っている。

きっとハンナもそういう理解で井戸に入ると過去に戻れるということを頭で理解しているのだろう。


「はい。たぶんそのことをビアンカは知っていました」


「え?」


「手紙の最後に『ハンナととウィルバート公子様に全てを委ねます』って……あれはふたりで過去を変えてほしいと言う意味だと思ったのです」


「なるほど」


確かにそう書いてあった。


「たとえクロノスの能力だとしても俺は怖いということを隠さないぞ」


「わかっています」


井戸に落ちるという行為が怖くない人間がいるはずがない。


「ですが信じてください」


「わかっている。信じている。俺もヤーコンにあの男の所業を聞いて絶対に許すことができないと思った。だから絶対に成功させる」


「ええ。わたしもです。国王陛下まで……。許せない」


ハンナも同じ気持ちだったようだ。


「二十四時間以内です」


「え?」


「それを過ぎると未来から来ている私たちの体が持たなくなります」


時間制限か。

だが、わからないわけじゃない。

本来その時間軸にいてはいけない人間なのだ。

それをクロノスの能力で可能にしているだけ。

だからそういう制限があるのは当たり前の間話だろう。

それを過ぎるるとどうなるかと考えるとぞっとしたが、それでもやらねばならないという決心に変わりはなかった。


「わかった。ではこんなプランでどうだ?」


「………そうですね。それとあとは………」


十分に話し合い、ふたりで納得するプランを練り込んだ。

プラン通りにうまく行くかなんてわからない。

けれど準備は完璧にしておきたい。


そして夜になると意を決してふたりは井戸へと向かった。


悪の根源と戦い、勝つために。

お読みいただきありがとうございます。

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