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過去と交信する1

屋敷に戻ると、ラフな服装に着替えてからふたりで母の部屋に入ると、ハンナは鏡をコツコツと叩いた。


今あちらのほうでも同じくらいの時間なのだろうか?

この時間であれば侍女たちは退出しているだろうしもし部屋にいれば変な音に気付くだろう。


「どうか……気づいてください。クリスティアナ様」


ハンナは根気よくコツコツコツと何度もたたき続けている。


どれくらい経っただろうか。

突然鏡に金髪の女性が映し出されて驚いた。


『誰?』


母上……。


そこには自分が知っている母をとても若くしたような女性が立っていた。溌剌としている。

あの頃みたいに目の下にクマを作ってずっと部屋にこもっている母ではない。


「ああ。よかった。わたしです。日記の双子の叔母です」


『え?本当に?まぁこんなところでも通信できるのね』


「そうみたいです。自己紹介がまだでした。わたしはハンナ・キャロライン・バーティナ。そしてこちらが……」


「ウィルバート・アドルファス・キングスフォード。あなたの息子です」


『え……』


驚きで口に手を当てている。


『息子なの?わたしとそっくりだわ』


「母上とエイダン公子様の息子です」


『わたしと……エイダン公子様ですって?』


不安そうに眉を顰めた。

ふつうなら父上とかいうはずだ。それを公子様と呼んだことに不安を覚えたのだろう。


「クリスティアナ様。今日はお願いがあって王都に出て来ました」


『お願い?』


「はい。日記には書き込んだのですが、フランチェスコという男とフィーネ、そしてグスタフという男を知りませんか?」


「あと、バイロンという名の男もだ」


「そうでした」


母は少し考えているような仕草をみせた。


『フランチェスコは領地で父の補佐官として雇っている男性よ。父を助けた人なの』


え?


「助けた?もしかして乗馬の事故ですか?」


『ええ。父と母は昔乗馬が好きだった。乗馬をしているときに馬が暴走したのよ。それを身を挺して助けてくれた庭番の男が彼。それから父は彼を重宝し、補佐官にした』


それは……やつの策略か。

もしかしたら祖父母を載せた馬もわざと……?


『フィーネは彼の妹よ。彼は孤児院出身の男性で、フィーネという妹と共に入っていたのよ。父が使用人の庭番が突然辞めた時に人が足りなくて孤児院から連れて来たのだと思うわ。フィーネは今は庭の掃除番をしているわ。グスタフは執事。でもバイロンは知らないわ』


フィーネが妹?

そんな話本当か嘘かわからないし孤児院なんて有り得ない。父親のバイロンは生きているのだ。孤児院に入れる必要はないはずだ。

前の庭番が辞めたことも怪しいし、どう考えても公爵家に入るために孤児院と手を組んだとしか思えない。


「心して聞いてください。クリスティアナ様。フランチェスコが公爵家の乗っ取りを企んでいます。このままいけばあなたを襲って凌辱し、結婚することになります。だから常に気を張り巡らせて置いてください」


『フランチェスコが?』


驚愕の表情だ。


『そんなこと……』


「ええ。それは紛れもない事実です。今未来にいるわたしたちが言っているのです」


ハンナの言葉には説得力があった。母は唇を引き結んだ。


『信じるわ』


上げた顔には覚悟が見えた。きっとハンナと日記でやり取りしているうちにふたりの間には絆ができているのだ。


「それで提案があるのですが……」


『それは何?』


ウィルバートは思わずハンナを見た。

提案?

そんな話聞いていないぞ。

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