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とびきりのディナー

その後ウィルバートは会員制の高級レストランに連れて行ってくれた。

王家も御用達だそうだ。


「こんな高級なところよいのですか?」


極上においしい。前菜からとろけそうなくらいで、スープは今まで飲んだことがないほどのコクである。


「すごく美味しいです」


「言っておくがここに別の女と来たことはないからな」


「え?」


怪訝な顔をするとウィルバートは改めてといった感じでフォークとナイフを置いた。ハンナも置く。


そして向かい合って視線を合わせるとウィルバートはおもむろに説明していった。


「弁解するつもりはない。俺は今までかなり遊んでいた。さっきの女とも関係したことはある」


真剣な眼差しだ。


「だがこんなレストランや観劇なんかに来るような間柄の女性とは付き合ったことがない。全てが初めてなんだ」


初めて……。


「本当に?」


自分が男性から好きだと言われる日が来るなんて思いもしなかった。それはビアンカの専売特許だと思っていた。だけど初めて好きだと言われたその人が天下のウィルバート閣下だなんて……。


「一緒にいたいと思った女性はハンナ、君だけだ」


ここまで言われたら……信じてもいいのかな。


「今から俺たちは過去に挑むことになるからこれから先どうなるかわからない』


コクッと頷く。

過去を変えれば未来は変わるだろう。

ウィルバートとの関係はなかったことになるかもしれない。

それはとても……怖いことだった。


「けれど知っておいてほしい。俺が君を好きだったってことを」


「わかりました。信じます。そしてウィルバート様とのこの時間を絶対忘れません」


信じよう、この人を。

好きだと言ってくれたこの人との時間を……。


「ありがとう」


嬉しそうに笑ったウィルバートの笑顔をずっと胸に焼き付けておこうと思った。


「せっかく美味しい料理なんですから食べましょう」


「そうだな」


最後の一皿まで残さず食べた。

この時間を忘れないように心に刻み込もうと思いながら。


もうすぐウィルバートとのこの時間が終わるかもしれない。


だが、怯えていてはいけない。

ひとりの男によってもたらされたこの不幸を終わらせなければならないのだ。

皆が幸せになるために。


ハンナはテーブルの下でこぶしをにぎりしめた。


さぁ勝負よ。

屋敷に戻って、クリスティアナ様と話さなきゃ。


「行くか。ハンナ」


「はい」



楽しい一日は幕を閉じた。

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