最後のデート?
ウィルバートは侍女に仕立て屋を呼ばせてドレスを持ってこさせ、急仕立てで既製品を修正してハンナのドレスを作らせた。
それにかかった時間おおよそ二時間。
かなりの高級品だ。
今日呼んで今日直させるなんて公爵家だけのなせる技だ。さすがというかなんというか……。
「こ、こんなドレス……」
「いいじゃないか。似合う」
ハンナの栗色の髪と象牙色の肌によく似合う深緑を基調としたドレスで最新の流行を取り入れたものだ。
最新型のドレスなどほぼ縁がなかったというのに今になって着ることになるとは……。
メイクのプロまで呼んでくれて綺麗に白粉をはたくとそれなりに見れる顔になった?
いやでも地味は地味ね。
と自分の顔を鏡で覗き込んでいると後ろに輝かしい金髪のイケメンが現れた。
鏡越しに見ても美のオーラが流れて来る。
ドキンと胸が跳ねる。
全く心臓に悪い。
昨日あんなことがあった後だから意識しているのだろうか?
「じゃぁ行くか」
後ろを振り向くと落ち着いた同じ深緑を基調とした軍服風の正装を着用するウィルバートはあまりにカッコよくて、体中からキラキラと星が零れ落ちているのではないかとハンナは目を疑った。
この人が本当にわたしを好きなのかしら?
こんな王都一かとも思えるくらいの男性が普通のわたしを?
それでも公爵家の侍女に髪型もアップにして今流行りのかんざし風髪飾りをつけてもらうとそれなりの見た目になった気がした。
「お綺麗ですわ」
ビアンカには程遠いがウィルバートの横にいても恥ずかしくないくらいにはなったかな?
いや、でもウィルバートは格別すぎる。
でもまあ…楽しもう。
せっかくの生まれて初めてのデートなのだし。
「行ってらっしゃいませ」
公爵家の使用人たちに見送られ豪華な馬車で屋敷を出ると、到着したのは観劇場だった。
「レストランではなかったのですか?」
「レストランに行く前にこういうのを見るのがデートというものだろう?観劇はしたことあるのか?」
「ありませんっ!楽しみます」
こういう観劇場やオペラ座では高位貴族には特等席を与えられていると噂には聞いていたが本当だった。公爵家の席は最上階の特等席でガラス張りのところから見下ろす形になっている。
こんなところから観劇を見られるなんて一生に一度しかないかもしれない。
身体中で楽しまなきゃ。
「ウィルバート様?」
もうすぐカーテンが上がると思ったときだ。
特等席の中で空席になっていた隣の席に客がやってきた。その女性がウィルバートを見て驚いたような顔をしている。
「観劇に女性と来られるなんて珍しいですわね」
声からすると若い令嬢のようだ。
振り向いてみると、妖艶な感じの美女が立っているではないか。
「ん?ああ……」
ウィルバートは一瞬だけそちらに顔を向け、にこりと挨拶だけ交わすとすぐにハンナの方へ向きなおった。
「昔の知り合いだ。ほうっておけ」
ふーん。
ピンときた。
昔の知り合い=昔関係をもった女ね?
なんとなく胸の奥がむずむずする。
こういう色気たっぷりの女性が好みなわけね。
それなのにわたしが好きとかおかしいにも程があるわ。昨日のことは本当とは思えない。
女性の隣には男がいる。
身なりからすると高位貴族のようだ。
女性はかなりいいドレスを着ていたが、なんとなく品がなく、身分の高い貴族には思えない。
ウィルバートがほぼ無視をしたものだから、眉をひそめて、そしてハンナを睨むように見てくる。
ええそりゃそうでしょうよ。
釣り合いませんよ。
ハンナは無視することにした。
そして改めて男性に視線を移す。
誰だろう?
何か見たことがあるような気がする。
なぜだろう?




