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王都へ

第三章入ります

昼から馬を飛ばしてやってきたのは久しぶりに来た実家のタウンハウスだ。

父が社交のために弟を連れて年に一度一月ほど滞在するくらいで、それ以外はほぼ執事にまかせきりの屋敷である。

しがない伯爵家のタウンハウスだ。場所的には郊外に近い王都の一等地からははずれたところにある。


剣術だけでなく乗馬の技量もたいしたものであるウィルバートが黒馬ダンを飛ばしている様はかなり絵になりドギマギしたのは置いておこう。

負けたくないと思っても彼がわざと遅く走らせてくれているのがわかるのだが、それでも絵になる彼を見るだけでそんなのどうでもよくなった。


昼から城を出て、二時ごろには屋敷につき、馬を馬止めに停めて屋敷に入っていくと、驚きながらも執事のギルが出迎えてくれた。

昔からいる執事で、かなり久々に会ったがもう白髪になってしまっていて驚いた。

昔はビアンカとかしの木に登ってはギルに助けてもらっていたっけ?


「ハンナお嬢様ではありませんか。いつぶりでしょうか?」


最後に来たのは十六歳のデビュタントの時かもしれない。

それ以来領地にこもり切りだったのだから。


執事は昔と変わらず歓迎ムードで出迎えてくれる。いい使用人である。


「久しぶりね。ギル」


「お嬢様はお綺麗になられましたね。旦那様よりお嬢様の活躍は聞いております」


実家はハンナが回していたようなところがある。父もそれは否定せず自慢気に人に吹聴していた。


「そんな大したことはないわ。ギルが元気そうでよかったわ」


「いえいえもえ白髪の爺でございます」


「何を言うの。まだまだここを守ってもらわなければならないんだからね。それより突然やって来てごめんね。少ししか時間がないのだけど……」


「はい。こちらの方は……?突然のことで何もご用意が……」


「こちらは知り合いの剣士様。かまわなくていいのよ。緊急で来ただけなの。ビアンカの遺品を整理したくて……」


ウィルバートは粗末な軍服を身に着けている。

身分を偽るためだ。


「そうでしたか。お部屋はそのままにしてあります。いつかハンナお嬢様が来られるとビアンカ様がおっしゃっていましたので……」


「え?」


ビアンカが言っていたって?


「もしかしてビアンカは出奔する前にここに来たの?」


「はい。そのとおりです。ビアンカ様がおっしゃっていたとおりですね。この一年の間にハンナお嬢様が必ず来るからそのときは自分の部屋に案内してほしいと。そしてかしの木を調べるよう言ってくれと」


なんですって?

じゃぁ全部用意して……死んだの?


「そうなのね。わかったわ。とりあえず部屋に入るわね」


「はい。ではお茶を用意して参ります。お好きな時にお召し上がりになれるようポットに入れておきますので」


「ありがとう」


そんなに時間があるわけではないと言うことを執事のギルは察してくれた様だ。急いでウィルバートとともにビアンカの部屋に上がっていく。


中はとても簡素な部屋だった。

華やかな生活をしていた割に部屋は簡素で寝るためだけに使っていたとわかる。

たぶん、ずっと夜会づくめで部屋になど戻らなかったのだろう。


部屋にひとつだけあった机を見つけたので、片っ端から引き出しを開けてみた。

ほとんど何もなかったが、一番上の引き出しに手紙が入っている。

中を開けてみると、とりとめのないあいさつ文が書かれているばかり。

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