ウィルバート視点からのビアンカの手紙2
【ハンナ・バーディナへ
これをあなたが読んでいる頃にはわたしはもう死んでいるでしょう。
詳しいことは言えないけれど、キングスフォード公爵家を出なければならなくなったの。
わたしのことは探さないでね。
わたしはあなたにとってはあまりいい姉ではなかったわね。勝手に王都に出て勝手に社交して勝手に結婚して勝手に子どもを産んで、そして一度も実家にも戻らなかった薄情な姉だった。
ごめんなさい。許して。そしてどうか最後のお願いを聞いてほしいの。
厚かましいことはわかってる。けれど、双子を引き取ってもらえないかしら?
まだ五歳なのに母がいなくなってしまうのは子どもにとってつらいでしょう?父親の公子様は一度も子どもを顧みなかったような方だから子どもがどうなろうとどう思われることもないわ。だからあなたに育ててほしいのよ。
本当に無理なお願いをしてごめんなさい。
今になって思い出すのはあなたと小さい頃過ごした王都の屋敷の思い出よ。あの大きなかしの木を覚えていて?あそこによく登ってお母様に怒られたわよね。もう一度登ってみたかった。ハンナも一度双子を連れて行ってみてよ。きっと楽しいわよ。
あ、公爵家にはわたしの馬がいるのよ。葦毛の女の子よ。一度会ってあげて。
それでは。あまり時間がないからもう行くわね。
ハンナは元気で長生きするのよ。
ビアンカ・バーディナ】
それは走り書きのような文字で書かれていた。
よほど急いで書いたのだろう。
双子の父親は自分だということになっている。やはり実家にも世間にも俺が父親だということにしていたようだ。
「これを見ると、君をジェイに引き合わせたかったように思えるな」
「え?」
「わざわざ書いているということはジェイに会えということじゃないのか?それとこのかしの木も気になる。王都の屋敷にあるっていう」
「かしの木?ですか」
「これは遺書だろう?そこに書いているということは何か意図があるとしか思えない。ただ楽しかったことを述べたいだけなら限定的には書かないからな」
そういうと、ハンナは驚いたようにウィルバートをじっと見た。
「ウィルバート様!すごいです」
がしっと手をとって来る。相変わらず感情豊かだ。
そんなことをするとは積極的な……。
「君、そんなことをして俺に襲ってほしいのか?」
「え?いえ、それは……」
からかってみると慌てて手を離してからもじもじしはじめる。
ふふ。
おもしろい。
やっぱり好きだ。
「行ってみるしかないな。タウンハウスに。俺と一緒に行こう」
「え?いいのですか?」
「ああ。君と馬で行けば一時間で到着できる。明日の午後から遠乗りするといって出かければ誰も気づかない」
「すごい!はい。行きましょう!」
めずらしく興奮していて、大きな胸がゆれている。
まずいな。
いくら女慣れしている自分でも目の前でこの危機感のない女が胸を揺らしていると……。
「なら、少し今日は早く寝よう」
「え?あ、はい」
悲しそうに見えるのは気のせいか?
だが、ここにいるとまずい。
ウィルバートは適当にごまかしながら早々に部屋を出るしかなかった。




