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許せない男

「ハンナ。君は乗馬ができると言っていたな」


次の日の朝食時だ。


ハンナは元気な双子と楽しそうに今日は何しようかと話していたのでふと思いついた。

うまい具合に今日は晴れだ。

少し暑いかもしれないが水筒を持参すればいいだろう。


「え?はい。得意です」


双子たちはきょとんとウィルバートに視線を向ける。

最近やっと恐怖におびえた目で見ることがなくなった気がする。


あの男が兄に勝つようにと刷り込んでいたせいで最初にここに戻ってきた時の双子たちの悪魔を見るかのような恐怖に満ちた視線で逆に自分が委縮しそうになったくらいだ。


「天気もいいことだし、昼からお前たちも一緒に乗馬ピクニックに出ないか?」


「え?」


ジャックの顔が輝いたのをハンナも見逃さなかったらしい。


「まぁ。いいですね」


ハンナも嬉しそうだ。


「わたしも長い間馬で遠出はしていませんからとてもうれしいです」


これまでもジャックの乗馬授業に付き合って一緒に乗ったりはしていたようだが、城の敷地内をトロットするくらいだろう。

本当に得意なら馬で駆け抜けたいだろうし。

ジャックの腕前も見たい。


「兄上、本当にいいのですか?」


「ああ。お前の腕も上達していると聞いている。ずっと城の中で訓練していたのだろうし、一度外に出てみるのもいいだろう。ジェニファーは俺と同乗するといい」


「ええ?お兄様と?」


はずかしそうにジェニファーがこくっと頷く。

普通に接することができているせいか双子が最近かわいく思えてきた。

子どもとはこんなにかわいいものなのか。


「「わーい」」


双子は大喜びだ。

ハンナは一緒になって嬉しそうに笑っている。


本当に表情が豊かだ。

作らない表情。

貴族の令嬢なのにそれができるハンナがとても好きだと、ウィルバートはまた思った。


朝食後にウィルバートは執務室に入ると、ヤーコンに言って、ばれないように図書館から家系図を持ってこさせた。


キングスフォード公爵家の家系図を入念に見ると、ハンナの言った通り、フランチェスコの上に伸びる線が不自然に斜めになっている。

紐づいているのは祖父母だ。

紙を傾けてよーく見ると、紙の上に凹凸があることに気づいた。とても薄い紙が貼ってある。

母の名前の上にだ。


「ヤーコン。ここに薄紙がはってあるだろう?」


「え?」


「横から見てみろ」


「え?ほんとですね?どういうことですか?」


「これを紙を傷つけずにはがせるか?」


「マッキノンを呼びましょう」


本当にマッキノンは何でもするな。

驚きながら彼の作業を見守りつつ大量の書類に判をついていく。

公爵としての執務だ。

確認も怠らないようにしなければならない。


二時間ほどかかっただろうか。ようやく紙がはがれたらしく、マッキノンがはがしたその薄紙の下には祖父母の下に母に向かってはっきりと線が伸びていた。


「これは……」


ヤーコンが絶句している。


「改竄された家系図だ。ハンナが調べ上げた」


「誠ですか?」


「ではこの男はいったい」


「それはこれからだ。ハンナと共にお前たちにも協力を頼みたい。マッキノン、まずフィーネとグスタフの素性を調べてくれ。それとフランチェスコの父親の名はバイロンと言うらしいというのはわかっている。その者も誰なのか調べてくれ。ヤーコンは奴らの派閥に属する使用人たちの出身地と紹介先を洗い出してくれ」


「わかりました」


「わかった以上、徹底的につぶす。容赦はしない」


「はっ」

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