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『おお。男の子じゃないか。クリスティアナ』


『まぁ、あなたにそっくりよ。ティアナ』


夢を見ているのだとウィルバートは思った。

見たことのないふたり。だが、肖像画を見ているから知っている。これは祖父母だ。

やはりハンナが言った通り、あの日記のせいで記憶が蘇った。というよりは母の記憶が自分に入ってきたのかもしれない。


母を見ると悲しそうな表情をしている。


『フランチェスコを呼びなさい。彼も心待ちにしているだろう』


祖父のその言葉に母はおんおんと泣きはじめた。


『まぁ。どうしたの?ティアナ……』


『なん……でもないの。けれ……どとてもわたしに似て……るわね』


『ほんとねぇ……』


そこにフランチェスコが現れた。


『ティアナ!生まれたんだね』


『ええ』


母はフランチェスコに目を合わせようとしない。


『君にそっくりだ。抱っこしても?』


母は一瞬拒否したそうに手をぴくっと動かしたが、フランチェスコは目は笑っていたが半ば強引に奪い取りウィルバートを抱き上げる。


『名はウィルバートにします』


びくびくしていた母はこれだけは譲れないという雰囲気を醸し出しながら告げた。


『わしの名をとるのだな。素晴らしい』


『はい』


『ウィルバート。おいこっち向けよ』


あの男は子煩悩のようにふるまっていた。実際は鬼のような人間だったが……。おそらく祖父母の前で猫をかぶっているのだろう。



はっとして目覚めた。

額には水滴があふれるほどの寝汗をかいている。


母の記憶……。

本当なんだな。ハンナ。

君と、そして母はクロノスの加護を得ている。


通常神は何らかの目的のために加護持ちを生み出すと言われている。

自分がアレス神の加護を得ているのはロズウェル王国を、国民を守るためだ。

そう考えている。

現国王はあまりに頼りない。

前王は優れていたが、王家も様々な派遣争いの末、今の国王が王として即位した。

だが通常どおりの執務をこなせるような人ではないのだ。

身体もお悪く、到底政治を見れるような方ではない。

だからこそそれに付け入る国が多いわけで、自分のような者が国を守らねばならないのだ。

ずっとそう思って生きている。

それを考慮するとハンナがクロノスの加護を得たのも何か理由があるはずで、彼女がここに来たのは母と交流するためであったと考えられる。


何か理由があって神がハンナをここに呼んだのだ。


・・・・・・・


待てよ。

ハンナがクロノスの加護を持っているということは……?


ウィルバートは寝汗をふいて寝間着を着替えながらしきりに考え込んでいた。

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