真実2
図書館にある家系図はキングスフォード家で作成されたものだ。王家に提出されているものの写しである。王家に保管されているものを正としてその後その写しが各貴族のもとへ配られるのだ。
王家でも父が公爵家の息子ということになっていた。
だが、この話だとこのあと母はエイダン卿とともに王城に出向くはずで、その時にはキングスフォード公女と認められている。だが、実際の家系図ではただの夫人となってしまっているということは、母が分家からの養女だったと報告し、フランチェスコをどこか外で見つけた息子だという報告をしてふたりを結婚させたか何かだろう。
「ところで、フランチェスコ公爵はいったい誰なのでしょう?」
ハンナの眉根にしわがよる。
ハンナはよくこの顔をする。
とにかくいつも考え込んでいて、眉間によくしわを寄せていた。
このハンナの表情がなんというか……好きだ。
「俺が物心ついたときには祖父母は死んでいて父が公爵だった。母はほとんど部屋にこもりっきりだった。だから父がいったいどこから来たのかは知らない。俺は何も知らずに、訳のわからない男に伝統ある公爵家を乗っ取られていたのか?」
「そうなりますね」
そう考えると無性に腹が立ってきた。
素性すらわからない男に乗っ取られている?
そんなバカな話……。
「父は足が悪かった。祖父母の乗馬の事故の時に助けたのが自分なのだと得意気に話しているのを聞いたことがある。酒が入っているときで上機嫌だった。今思えば母が亡くなって少し経った頃だと思う」
「もしかしたら……」
ハンナはそれ以上言わなかったが、言いたいことはわかった。
自分もその可能性には気付いた。考えると吐き気がする。
「ああ。そうだな。母や祖父母は殺されていた可能性は否めない」
ハンナの顔がゆがんでいる。
こういう顔も好きだ。
ハンナの化粧気のないうすい顔の表情がくるくる変わるのがとても好きらしい。
こんなごく普通の顔をした女なのに。
「同じ時代に同じ神の加護者は二人と存在しない。そのことを母はわかっているのだろうか?」
ハンナも自分も加護持ちということをよく考えれば自分は二十七年後にはすでにこの世にいないということに気づくはずだ。それはすごく悲しいことに違いない。
「それはわたしも考えてみました。加護のことを詳しくご存知なのかどうか……。この文面だけではわからないですね……」
と、突然流れ込むかのように自分の脳裏にある小さい頃の出来事が思い浮かんだ。
「待ってくれ。そうだ。フィーネと執事は父と知り合いだった。ふたりがこそこそ話しているのを聞いたことがあるんだ。『バイロン様がフランに殺らせろっていったのよ。息子に殺しをさせるなんて最低よね。しかも好きな女をよ』『ああ。だがいつか殺らねばならない』って。あれは今思えば父が母を殺すという意味だったんだ。あの頃は殺るという隠語を知らなかった。だが今ならわかる。フランはフランチェスコ。父のことだろう?」
なぜ今まで忘れていたのか?




