キングスフォード公爵家の内情1
「毎日この量をこなしているのですか?」
「は、はい。左様でございます。先の公爵閣下は公子様、公女様のためにかなり密なスケジュールを組んでいらっしゃいましたので」
早速次の日双子の侍女だと名乗ったフィーネを部屋に呼び出し、双子についていろいろ教えてもらおうとしたところびっしり詰まった毎日の教育スケジュール表を見せられ唖然とした。
それは五歳の子どもが受ける教育とは思えないもので、朝ごはんを食べた後から寝るまでびっしりと予定が詰まっている。
マナーから勉強、そしてジャックは剣術にジェニファーは刺繍。さらにダンス。
五歳でこれだけのことをしたら気が狂うとしか思えない量だ。
ビアンカもこれに同意していたのだろうか?
「今ふたりは何をしているの?」
「さきほどマナー講師のオーブリー夫人が来られ、勉強に向かわれました」
まだ朝ご飯を食べてすぐだ。
そんな朝早くからだなんて。
確かに昨日の夕食と朝食で見た双子の食事マナーは五歳とは思えぬほどきちんとしてはいたけれど……。
ハンナは頭を抱えた。
おかしい。
気が狂っている。
天下のキングスフォード公爵家ともなればこれが普通なのだろうか?
ウィルバートも小さいころからこんな教育を?
「フィーネ。お願いがあるの」
「なんでございましょうか」
まだ一夜しか過ごしていないが、使用人たちの中に派閥がありそうな気配を感じ取った。
フィーネというこの双子の侍女は見たところは中立に見えた。
年齢的には四十歳そこそこくらいか?黒髪に茶色っぽい瞳の目立たぬ顔だちをした表情に乏しい女性だ。
まぁ他の者も含め誰のことも知らないのだから、中立でなくても彼女に頼むしかないのだが。
「ウィルバート閣下にお会いしたいの。閣下のご予定はいつもどんな感じ?一日中忙しくされているの?」
昨日居座ることに決めてビアンカが使っていたという部屋に入ったはいいのだが驚くことに掃除も何もしていなかったようで、彼女が出奔してから三か月が経っていたのでいい具合に埃がかぶっていた。
これでは過ごせないと、連れてきた乳姉妹の侍女ニアと護衛騎士のリードとソルディもフル稼働してもらっている間に、ハンナはあらかじめ呼ばれていた時間に階下のホールに降りてディナーをいただいたのだが……。
夕食の席についているのに、ただ黙々と食べているだけ。
ウィルバートは双子に声もかけなければそちらに視線を送ることすらしない。
それが普通なのか双子も静かにもくもくと食べている。
もちろん押し掛けてきた小姑になど話すこともないと言いたげだ。
双子がいるといろいろ聞きたいことも聞けないな、と思っていたら瞬く間に食べ終わりディナーは終了。
あっけにとられるような食事だった。
ただ食事はとてもおいしかった。
それが救いだ。
そんなだからウィルバートとは何も話せていない。
双子の今後について話し合わなければならないのだが、いかんせん日中どこに詰めているのかもわからない。
屋敷の案内も誰もしてくれないのだから。
「そうですね。早朝は訓練。午前中は執務室にいらっしゃることが多いですが、午後からは外出されることもあればいろいろな予定があることが多いです」
「そう。では今日は?」
「本日の予定までは存じ上げません。閣下の補佐官をされているヤーコン様ならご存じだとは思いますが」
ヤーコン。
昨日押し掛けてきたときにウィルバートが命令していた男性にそう呼びかけていたなと思い出す。
見た目は几帳面な男性に見えたけれど……。
「では、この手紙をヤーコン補佐官に届けてくれないかしら?必ずよ」
「はい。かしこまりました」
ハンナはさらさらと羽ペンを走らせ封筒に入れるとフィーネに手渡した。
これで会ってくれるかしら?




