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弱気な公爵閣下1

「フィーネを解雇したぞ」


「まぁ!それは……よ」


よかったですと言いそうになった。

今日も夜になるとウィルバートの部屋で会合だ。

相変わらずルルナルを用意してくれていて、少しずつ口に含みながら今日は何を聞こうかとソファに沈み込んだところでウィルバートからの嬉しい報せだ。

双子の侍女をはずした後は部屋から出ないように申し付けてあった。

それでも出ようとするだろうと見込み、出られないように外から鍵をかけ、兵士に見張らせていたはずだ。


「彼女は窓から脱出して双子の部屋に入ったところを兵士にとらえられた。父はもうすぐ生き返るのだとかギャーギャーと支離滅裂なことをわめき散らすので解雇に踏み切った。どうやら修道院送りになりそうだ」


「修道院?」


「ああ。精神的におかしくなっているからな」


精神を病んでの修道院送りというのは実質的に一生出られない監獄に入るみたいなものだ。治るまでという名目で死ぬまで奉仕活動を余儀なくされる。

食べ物もろくなものは与えられず、餓死する者も多いらしい。


「そうですか。はっきり申し上げますと、よかったと思います」


同情しないわけではないが、双子に対する態度はあまりにひどすぎた。


そしたらウィルバートは「ははは」と笑った。


「まぁ君ならそう言うだろうな」


「ええ。何なら最初から解雇したかったくらいです」


「ああ」


クスクスクスと笑っている。


「なんですか?」


「熱弁するからだ」


「は?」


ウィルバートは昨日もだったが、ブランデーを飲んでいる。

お酒は強そうだが、酔っぱらっているのだろうか?


「俺が相手にしてきた女は都会の社交界の上辺だけの薄っぺらい世界に生きる女たちだ。君を見てると生活感を感じられていい」


「は?」


いい?

いいとは?どういう?


目を細めてこちらをじっと見ているウィルバートの碧い瞳に吸い込まれそうな気がした。細めていても眼力が伝わってくる。


いやいや、何をいっているのこの人は?


「わ、わたしは実家をほとんどひとりで取り仕切っていましたので、現実の中に生きていましたから」


都で上辺の世界で生きるのを選んだのはビアンカだ。

ビアンカみたいに都で華やかに生きたいと思いはしなかったが、憧れたことはある。

けれど自分にとっては実家を守ることの方が大事だった。


弟に引き継ぐまで必死で実家を守ってきたのだ。


そして今はビアンカの忘れ形見の双子を育てるためにここにいる。


「君は強いんだな」


「そ……」


「俺は……弱い」


ど?どうしたのだろう?

今日はやけに弱気発言ばかり…


「そ、そんなことはありません。ウィルバート様が剣をふるっているときはまるで……」


「それはアレスの加護があるからだ。俺自身の力ではない」


は?

何を言っているのよ。この人は。

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