一日の終わりにはやっぱり日記
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【六月二十三日 曇
踊れた。踊れたわよ!エイダン公子様と踊れた!エイダン様から誘ってくださったの。とっても素敵なダンスだった。十九年間生きてきて最高の日だった。適当に婚約なんてしなくてよかったわ。これは運命よ、とても素敵だわ。エイダン様…す…す…やっぱり書けないわ。はずかしくて。無理よ。
ところでもうひとりのあなた。あなたは恋したことがあって?恋ってすばらしいわよ。一日で恋に落ちることもあるのね。
エイダン様はこれから当分滞在されるみたい。明日はわたしがプリングの街を案内することになったの。とびっきりおしゃれしていかなくちゃ
もうひとりのあなたへ
あなたが何と言おうとわたしはキングスフォード家の娘よ。もしかしてあなたは過去の人?それだったら素敵ね。時空を超えて交換日記をしているなんて。そういうお話をおばあ様から聞いたことがあるわ。遠い昔の物語だったかしらね?演武場なんてあるの?今はないわ。昔はあったのかしら。私兵も持っていない。何しろお父様が乗馬中の事故に遭ってからすごく臆病になってしまわれたから……。
じゃぁね。明日はエイダン様とのデートの報告をするから待っていて】
ウィルバートとの会合から戻って真っ先に『秘密の引き出し』を開けて読んでいるところだ。
プリングとはキングスフォード公爵領の領都だ。
莫大な土地をもつキングスフォード公爵領には領主が住む城がある街がまるで王都のように栄えているため領都と呼ぶ。
事実プリングは王都とかわらないほどの大きさで何なら王都より栄えているかと思うくらいだ。
よかったわね。ダンスできて。
どうやら結婚まで持っていきたいって思ってるのね。
なかなかやり手ではないか。
ハンナは恋はしたことがない。
恋はビアンカの専門だった。
自分には小さい弟のために領地を守る責任があったし、とてもじゃないけど恋なんて考えている暇もなかった。
そうこうしているうちにもう二十二歳。適齢期を過ぎてしまった。
もう結婚はあきらめかけている。
こんなわたしがいつか恋なんてできるのだろうか?
きっと無理よね。
双子を育てることに全力を注ごう。
子供は産んだことなくても子育ては案外楽しいもの。
もう日が変わっており、あくびが出そうになるのを堪えて自分の日記も書き込んでいく。
【六月二十四日 曇
今日は公爵家の図書館に行ってみたの。ジャックが乗馬の授業を受けている間にジェニファーが本を読みたいというので。あの子は本が大好きらしいわ。わたしも嫌いでないけれどこんなにたくさんの本を見たのははじめて。何を読もうかと思って、加護のお話を読んでみた。ウィルバート様にはアレスの加護があることを知ったから。加護について勉強したくて。加護っていろいろあるのね。勉強になったわ。
もうひとりのあなたへ
あなたが未来の人だったとしたら面白いわね。それだったら、ジャックかジェニファーの子孫ということになるわ。時空を超えた交換日記だったとしたらすごいことよ。ちなみに今はロズウェル歴六ニ八年よ。あなたはいつの時代の人?
エイダン公子様とのデートうまくいくといいわね。陰ながら応援してるわ。わたしは恋したことがないわ。恋って素敵なんでしょう?姉は常に恋していた。だからうらやましかった。コイバナ聞かせてね】
今日はもう遅い、そのままベッドに入るとスースーと眠ってしまった。
これがただの魔術で日記の主は実は存在しないのだとしても、ふたりがうまくいくといいのにと思いながら……。
銀髪の美青年と日記のもうひとりの主が仲良さそうにデートしている夢を見た。
日記の主の容姿を聞いたわけではないのに、なぜかその女性は金髪に碧眼のウィルバートに似た華やかな美しい女性だった。
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