カクテルを飲みながら1
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「今日はカクテルを用意したぞ」
「まぁルルナルだわ」
ルルナというすっぱい果物のカクテルだ。酸っぱさの中に甘さがありとてもおいしいのだ。
「わたしがルルナルを好きだとご存じだったのですか?」
「ああ。ニアに聞いた」
「まぁ」
ニアったら。知らない間に……。
今日は朝からニアはにやにやしっぱなしだった。
昨日のディナーでふたりきりで過ごしたからだ。
何があったのか聞きたくてうずうずしているのがありありとわかる。
さらに今日は夕方のお風呂はたくさんの侍女がつき、入念に体を洗われた。
そういうわけじゃないのにやめてほしい。
ぶつぶつと心の中で考えているうちにルルナルを作成してくれたらしいウィルバートからグラスを手渡された。
「まぁ座れ」
「はい。ありがとうございます」
グラスを受け取り、ウィルバートの向かいに座る。
ウィルバートの部屋に入ったのは初めてだが、部屋が二つに分かれており、どうやらここはリビング兼簡易の執務室になっているらしい。中央に大きなソファを向かいあわせに真ん中に小さなテーブルが置かれている。
おそらく奥にある扉の向こうが寝室なのだろう。
家具は上質なものをそろえてあるが、ものは少なく簡潔な部屋だ。
ごてごてしていなくて趣味のいい部屋だと思った。
一口飲んでみる。
やっぱりおいしい。
ルルナルは最高だ。
「それで?今日はどんな話をするんだ?」
「そうですね。いろいろ聞きたいことはありますが……。では厩舎のことを聞いてもいいですか?」
「厩舎か。ああ、どんな話だ?」
「まず、あの厩舎は今は兵士たちの軍馬がおりますが、ウィルバート閣下がこちらに戻られる前からいた乗馬用の馬たちが今もおります」
「待て」
「はい?」
「閣下はつけなくていい。昨日も言ったが、俺は仮の公爵だからな。ウィルバートと呼び捨ててくれてかまわない」
「そ、それは……」
さすがに呼び捨てはできない。
「では、ウィルバート様。それではわたしのこともハンナと……」
「よし、では遠慮なく。ハンナ。それで乗馬用の馬については俺は関与していないぞ。君の姉が集めていた馬だろう?」
「はい。ご存じなのですね」
「戻ったときに厩舎の者たちが言っていた。公爵夫人が集めた馬だと。その馬で出奔したと聞いたが?」
「そのようなのです。しかもその馬の名がハンナらしく……」
それを聞いたウィルバートはブランデーを口に運びながらその碧い瞳を見開いた。
「確か一番足の速い馬だったと言っていたな。その馬に君の名を?」
「はい。それ以外の馬も全部家族の名なのです」
ウィルバートは大きく目を見開いて表情で返事をした。
「乗馬が好きな女性だったと厩舎の使用人は言っていたな。あの厩舎も長いこと使っていなかったから復興は大変だったろう」
長いこと?
ふと日記のもうひとりの主の言葉を思い出した。
彼女も厩舎があるけど長いこと使っていないと言っていた。
「公爵家に馬は長年いなかったのですか?」
「ああ。そうだ。まだ俺も生まれてないほどの昔の話だから詳細は知らないが乗馬中の事故があったらしい。小さい頃に聞いたことがある」
「事故?」
あまりにあの日記のもうひとりの主の言葉と一致するではないか。
「事故とは?」
「俺の祖父母が乗馬中に事故に遭ったと聞いてる」
え?
どういうことだろう?
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