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危険な魔術?

かなり長い間ホールでウィルバートと話し込んでいたことにびっくりしながら部屋に戻ると急いで『秘密の引き出し』を開ける。


開けてみると、もうひとりの誰かがやっぱりこの日記をさわったということが一目瞭然にわかった。

今日は日記が裏向きにおかれているではないか。


どうやらもうひとりの日記の主はかなり大雑把な性格らしい。


【六月二十二日 晴れた!

 昨日の雨がうそのように晴れて、フィリーズ公爵家(プレストン王国の使者ね)の公子様がいらした。

 とてもサラサラの銀の糸のような髪が素敵。すばらしい剣士様らしくて、白い軍服姿は神々しくてまるで神のようだった。

 あんな素敵な方とダンスできたらいいのになぁ。明日は舞踏会。エイダン公子様が誘ってくださらないかしら……ドキドキ。

 

 ところでもうひとりのあなた。

 双子の兄妹がいるの?それともあなたの子どもたち?乗馬なんて素敵ね。うちにも厩舎があるけれど今は誰も使っていないわ。お父様とお母様が乗馬で事故に会ってからはね。

あとね、プレストン王国との国交が悪化しているなんて聞いたことがないわ。エイダン公子様はとても友好的な方だったわよ。国交を深めるために我がキングスフォード公爵家にいらしたのだもの。ところであなたが名乗る気がないのならわたしの名前を当ててみて。でもこの日記を読めば誰か想像つくかしら?】

 

読んで、思わず「ぷっ」と吹き出しそうになった。

なかなかおちゃめなレディだ。

どうやらそのエイダンっていう公子様に恋した様子。

明日は舞踏会で踊れたらいいわね。


って、だから誰?

キングスフォード公爵家を我が家と言える女性なんて今はジェニファーしか存在しない。

ジェニファーなわけはないし……。

いったい……?


【六月二十三日 晴

 今日は演舞場の見学に双子たちと行った。ウィルバート閣下の覇気にジェニファーは気絶寸前。ジャックとわたしも額に汗をかきながら見ていた。とても素晴らしかった。惚れ惚れするような剣捌きでそして誰をも圧倒する覇気。わたしたちは早々に引き上げなければならなかったわ。ジャックは自分も頑張ると言ったけれど、わたしは馬術を頑張って欲しいな。


 追伸

 今の時代にキングスフォードを我が家と呼べる女性は誰も存在しないわ。ひとりだけいるけれどそれは双子の妹ジェニファー。ジェニファーはまだ五歳だからこんな日記は書けないもの。あなたは誰?ちなみにわたしはこのキングスフォード公爵家に居候している双子の公子様と公女様のしがない叔母よ。わたしの双子の姉が双子の母なのよ。

 エイダン公子様との舞踏会はどうだった?ダンスできたかしら?報告を楽しみにしているわ】

 

日記を『秘密の引き出し』にしまってからもしかしてこの日記のもうひとりの主は実のところは何かの魔術であたかも誰かが書いているように見せるような術なのかもしれないと思った。この分厚い古びた日記本にそんな魔術がかけられているのかもしれない。

魔術などどんなものかも知らないが、世界のどこかには危険な魔術を使う魔女のような人間もいると聞く。

そう思うとちょっとぞっとするが、このレディはおもしろいから楽しいかもしれない。

楽しめばいいのよ。

変なことは書いていないんだし。


気軽に考えよう。


ディナーにワインを飲んでいたのもあって、ハンナはベッドに潜り込むとすぐに睡魔に襲われ朝まで深い眠りをむさぼった。


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