再び驚くべき事実
「合うな。ワインと」
「そうですね」
ウィルバートはアルコールは強い方なのかコクコクと飲み干すと横に置かれたワインボトルから自分で空になったワイングラスにワインを注いでいる。
あれ?
周りを見てみると給仕たちがいない。
先程ウィルバートが耳打ちしていたのは給仕たちに下がるよう命じていたのか。
「何かお話があるのでしょうか?」
「するどいな」
ワインをまた一口飲んでから口角をあげた。
「夜に部屋に呼ぶわけにはいかないのでね。こういう機会でもないと話せないだろう?」
「はい」
昼には執務室にヤーコンがいるし、いくらヤーコンがウィルバートの腹心だとはいえ、聞かれたくない話もあるのだろう。
使用人たちは執事やフィーネなど信用できない者もいる。
「君は双子の叔母だ。双子のことで伝えておきたいことがあるんだ」
双子のこと?
「単刀直入に言おう」
そこでウィルバートは少し声を落とした。
「俺は先の公爵の実子ではない」
「え?」
驚いて思わずナイフを落としそうになった。
「なっ!」
まさか?
壁に大きく飾られていた大きな肖像画を思い出した。
ウィルバートの母君はウィルバートとそっくりだった。だが、父君、つまり先の公爵閣下は?似ていなかったかもしれない。
「ただし、これは俺以外は誰も知らないことだから口外はしないでくれ。君が双子の叔母であり保護者にあたるから伝えただけだ」
「誰も知らな……い……と言いますと?」
「母は誰にも知られずに亡くなった。もちろん俺にも。だが、俺は気づいた。詳細は言えないが、本当の父は別にいる」
「そ……」
「そしてそのことを父、つまり先の公爵が気づいたようなのだ」
「え?」
「双子が生まれたころだと思う。その頃に父は俺が実子ではないと知った。だから君の姉に自分の子を産ませた」
「なっ!」
「だが、公的には俺が実子であり公爵家の後継と王家に届け出ているからそれを変えるにはかなりの労力を要する。俺が実子でないという証明が必要だし、俺は王家の人望が厚いからなかなか難しい。だから苦労していたようだが、結局、双子を後継に変更する前に本人が死んでしまった」
「なんという……」
そんな奥深い話が……。
先の公爵が双子に兄に勝たねばならないと教育していたのはそのため?
だから必死で恐ろしいほどの英才教育を施していたの?
「俺は公爵家を継ぐ権利を持たないんだ」
「で、ですが……」
これほどの男が本当に公爵家の息子ではないと?
高貴なオーラ全開の男が?
「ですが、あなたは軍神アレスの加護をお持ちでは?」
思わず口を滑らせてしまったが、ウィルバートは驚いたようにお肉からハンナに視線を移した。
「わかったのか?」
「はい。演武場でのあの覇気は神の加護に他ありませんから」




