乗馬体験2
「あ、これお母様のお馬さんだわ」
ジェイだ。
一頭だけ葦毛なのでわかりやすいのだ。
遠くからいつも母親を見ていたのだろう。
会えない母を……。
ジェイがすいっとハンナにすり寄ってきた。
まぁ。かわいい。
この服にビアンカのにおいが染みついているのかもしれない。
服をくんくんと嗅いでいる。
「ねぇ。おばさま。乗ってみたい!」
「そうねぇ……」
乗るといってもひとりでは危ない。ハンナが教えてもいいのだが……。
「ねぇ。おとなしい馬はいないかしら?ふたりが背にまたがっても怒らないような」
「そうですなぁ……」
馬丁たちはおおむね人当たりがよく、先日訪れた際にも皆親切だった。
「ネリーなら大丈夫でしょう。おいっ!ヒュイ。ネリーを連れてきな」
「へい」
ネリー?
驚いた。母の名だ。
そして連れてこられた馬は本当におとなしそうな落ち着いた牝馬で母に似ている。
「ヒュイが乗り方も指南しましょう。ある程度ならできますて」
ヒュイは二十代前半くらいの厩舎では一番若く見える青年だ。
「お嬢様はどうされますか?」
「そうね。ジェイに乗ってみてもいいかしら?姉と同じでわたしも乗馬は得意なの」
「おお、そうなんですかい。奥様はとても馬がお好きでした。あんなことになってわしらも戸惑っております」
皆が苦い顔をしている。
もしかしたらこの人たちは何か知っているのだろうか?
姉が出奔した日のことを?
「ねぇ……何か……」
そこまで言ってからハンナはやっぱりやめようと思った。
子どもたちがいる。
今度子どもたちがいないときに聞きに来よう。
子どもたちはヒュイに教えてもらい、ネリーにニンジンをあげている。
「そうです。怖がらずにこうやって」
「わぁ。食べてる」
とても楽しそうだ。
ジェニファーが先に乗ることにしたようで、というよりはおそらくジャックが譲ったのだろうが、ヒュイにひょいっと馬の上に乗せてもらって、パカパカとネリーが歩くとジェニファーは最初怖そうだったが、背筋を立てて上手に乗れるようになってきた。
「そうそう。怖がっちゃダメです。その調子で。公女様」
「ねぇおばさま!すごいわ。向こうの方まで見える!」
厩舎の前にある庭を一周回ると次はジャックの番だ。
彼は静かにネリーに乗ると、すいすいと乗りこなした。
まぁ……これは!
「公子様!なんと!」




